手に入れた夢のタワマンを手放すことになる人も……
5月4日、
朝日新聞がフラット35を巡る不正融資を報じたことで、不動産業界が騒然としている。国民のマイホーム取得を後押しするという理念で販売されているローン商品を悪用し、借金にあえぐ低所得者に投資用不動産を売りつけていた実態が暴露されたのだ。
「報道のように、
投資用物件の価格を水増ししてフラット35からの融資を引き出し、物件取得にかかる費用との差額を客にキックバックする手法は、この業界に10年以上前から存在しているポピュラーなものでした。客はその差額でそれまで抱えていた消費者金融など高金利の借金を返し、取得した投資用不動産から家賃収入を得ながら、年利1%程度の住宅ローンを返済していくわけです」
そう語るのは、『
超実践 不動産投資のプロ技』の著者で、現役の不動産営業マンの関田タカシ氏だ。
関田氏によれば、自分が住むと偽って融資を引き出すことから、業界では
「なんちゃって」と広く呼ばれてきた手口だという。高利の百万円単位の借金から、低利の千万円単位の借金への借り換えとも言えるだろう。常習的に行われてきたこの不正が、なぜ今になって露見したのか。
「’12年末からの金融緩和であふれたマネーの受け皿になったのが、不動産業界です。特にスルガ銀行は不動産投資用物件のローンに積極的で、多くの不動産業者はスルガのゆるい審査のおかげでさんざん“オイシイ思い”をしてきました。しかし昨年4月以降の報道で、借り手の年収や物件価格を水増しする偽装工作が発覚し、スルガバブルが崩壊。それに伴い『一棟モノ』と呼ばれる一棟マンション・一棟アパートで稼げなくなった営業マンが区分投資マンションを扱う業者に鞍替えし、一気に融資を引き締めたスルガの代わりとして、フラット35を活用して派手に押し込んでいったというわけです」
フラット35は、金融機関が融資を実行した後、その債権を住宅金融支援機構に譲渡する仕組みだ。金融機関は融資実行の際に手数料を得て、貸し倒れリスクを負わずに済む。このスキームにおいては、年収300万円以下で、かつ借金を抱えている層がターゲットになっているが、借り手がウソの申告をしていても、金融機関が目をつぶる動機は十分にあるわけだ。