自社株買い枠激増の理由。そして、狙い目銘柄は?

株価急騰に安易に飛びつくのは危険

 しかし、自社株買いが発表されたからといって、株価急騰に安易に飛びつくのは危険だ。  大神田氏が続ける。 「例えば『2億円を上限に自社株買いを行う』と発表したものの、約1年の買付期間終了後に発表された買付株式数はゼロだった企業もありました。また去年全体でいうと、新株発行によって資金調達する額より、投資家に利益還元する額のほうが大きかった。これでは株式市場に上場する意味をなしていません」  では、ベストの自社株買いはどのようなものだろうか。日本の投資信託会社で運用成績トップを争うコモンズ投信・代表取締役社長の伊井哲朗氏は、上手な自社株買いとして「株価の安いときに買い、経営陣として市場に明確なメッセージを送ること」を挙げる。典型例が2月に自社株買いを発表したソフトバンクグループだという。 「総額6000億円というインパクトの大きさに加え、孫正義会長兼社長が自社の株価が安すぎると不満を示し、株価の割安状態を修正する意向を市場にアピールしました。また、買った株の効力を失わせる『消却』を予告どおり実施し、資金の使い道のわかりやすさも支持されました」(伊井氏)

今後、自社株買いで株価が上がる企業は

 2月の発表翌日、ソフトバンク株はストップ高で18%高になった。  では今後、自社株買いの実施で株価がさらに続伸していくのはどんな企業か。大神田氏は「内部留保が厚く、利益も増えている割に株価が低水準の企業に尽きる」と話す。 「三菱地所は3期連続の最高益を達成し、初の自社株買いを発表しました。3年ほど前からアナリスト説明会の席で、経営陣から遠回しながら自社株買いに言及があった。昨年はライバルの三井不動産が自社株買いを実施したが、それでも実施を見送ってきた経緯があります。横並び意識の強い財閥系不動産会社だけに、業績好調な住友不動産や旧富士銀行・安田財閥系の東京建物も自社株買いの有力候補とみられます。また、連続増益企業でいえば、花王も自社株買いが期待されます。花王は’19年12月期も増収増益が濃厚で、営業利益は6年連続で過去最高を更新する見込み。アジア事業拡大のための資金手当ては十分とみられ、余った資金は配当と自社株買いをバランスよく実施して株主に還元することになりそうです。小林製薬も連続最高益企業の代表格。米中貿易摩擦の影響を受けにくく、安全志向が強い年金マネーの受け皿としての需要も大きい」  株価の下支えになるだけでなく、さらなる爆上げが期待できる自社株買い銘柄に狙いを定めたい。
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自社株買いが予想される6銘柄
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