難民申請を却下され収容されたクルド人。残された妻と3人の子供の「終わらない苦しみ」

トルコには、安心して暮らせる場所がない

イナンさん

イナンさんは家族の心配をしながら、1年半収容され続けている

 イナンさんの妻は憔悴しきっていて、時にうなだれた。 「夫はトルコへ帰れない、今は危ない。せめて5年だけでも日本にいさせてもらえれば、もしかしたら安全になるかもしれない……。疲れた……子供はケンカばかり。宿題を教えてやれない、学校では夫のことを聞かれる」  なぜトルコには帰れないのか。妻はこう語る。 「トルコは危ない。(トルコ政府の弾圧によって)クルド人である限り、安心して暮らせる場所はない。(トルコの)エルドアン大統領もクルド人嫌い。生活の中に、いつも差別あった」  さらに、イナンさん一家が住んでいたガジアンテップという町は、内戦が続いていたシリアとの国境に近い。そのため多くの人々が出入りをしていて、現在、治安がとても不安定な状態にあるという。  イナンさんが収容されて1年6か月が過ぎようとしている。入管には「トルコへ帰るように」と何度も言われているが、頑として「帰らない」との意思を貫き続けている。入管は厳しくなる一方で、なかなか解放される人がいない。イナンさんの家族のように、何年たっても引き離され続けているケースは非常に多い。  これは子供たちの精神状態にとっても、決して良いこととは言えない。一刻も早く、家族が一つになることを望まずにはいられない。 <文/織田朝日>
おだあさひ●Twitter ID:@freeasahi。外国人支援団体「編む夢企画」主宰。著書に『となりの難民――日本が認めない99%の人たちのSOS』(旬報社)など。入管収容所の実態をマンガで描いた『ある日の入管』(扶桑社)を2月28日に上梓。
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