実は、あらかじめ時間の約束をしていても、そのミーティングの冒頭の場面で話し手が所要時間をあらためて伝えないと、聞き手は「この話し手は時間どおりに話してくれるだろうか」「このあとすぐに予定が入っているけれども、大丈夫だろうか」と不安が高じてしまい、話に集中できないということになりがちだ。
「本日はお約束させていただいたとおり、30分お時間をいただければと思います」
「1時間お時間をいただいていますが、20分でご説明して、その後、率直なご感想やご質問などをいただければ幸いです」
というように、あらためて伝えることがよい。
BIGPRのうち、慣れるまでは、抜け落ちてしまいがちなのが、
「Role」の頭文字のRで、
相手に期待する役割だ。
「評価の確認や共有のためなので、気になることを言ってくれれば助かります」
「商品の紹介を聞いていただき、購入するかどうかのご判断をいただければ幸いです」
「商品の紹介を聞いていただき、今日は、率直な感想を聞かせていただければ幸いです。ご興味があれば、別途、詳しいご説明をさせていただきます」
といった内容になる。
どんなにすばらしい話でも、時間の経過とともに聞き手の関心度、集中度は低下するのが当たり前だ。だから、対話の冒頭で聞き手の関心度、集中度をできるだけ高めておけばよい。
聞き手の関心度、集中度を高めるためには、聞き手の不安を取り除けばよい。BIGPRを伝えることで、聞き手の不安を取り除いて、話の内容に集中させやすくなるのだ。
しかし、このBIGPRを長々と話してしまうと、BIGPRを話している最中に、聞き手は関心度、集中度を低下させ始める。従って、BIGPRを繰り出すときに最も大事なことは、BIGRPそれぞれを1フレーズずつで完結に話すということだ。
冒頭に必要な要素を話すには「BIGPR」を意識せよ
質問:冒頭の会話が大変そうに感じる
背景、自己紹介、目的、所要時間、相手に期待する役割を話せばよいということはわかりましたが、とても大変そうな感じがします。簡単に話せるようになる方法があるでしょうか?
回答:BIGPRを心掛ける
会話の前に、BIGPR(ビッグピーアール)を行うことを心掛けていくと、気持ちが楽になるかもしれません。BIGPRとは、以下の単語の頭文字をとったもので、会話の冒頭に、背景、自己紹介、目的、所要時間、相手に期待する役割を、簡潔に話すことです。会話の冒頭でBIGPRを話すというように心掛けて、気軽に取り組んでみてください。
B:Background(背景)
I:Introduction(自己紹介)
G:Goal(目的)
P:Period(所要時間)
R:Role(相手に期待する役割)
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第138回】
【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『
チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『
クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある