子供なら誰でも来ていらっしゃい。港区にある子ども食堂の取り組み
広尾駅から歩いて10分。第1・第3水曜日になると、有栖川宮記念公園にある公共スペース「ありすいきいきプラザ」3Fの講習室・学習室は、日が沈み始める頃に多くの人で賑わいます。集まるのは、1人でくる小学生の子、学校や保育園に通う子供を持つ親、子ども食堂の関係者といった幅広い人たち。
そんな彼らを集めて行っているのが、NPO法人みなと子ども食堂。理事長を務めるのは、宮口高枝さん。
「私自身もね、母子家庭でね。母が野良仕事で忙しかったから、一人でご飯を食べていたの。だから寂しさは分かります」
宮口さんは、5人兄弟の末っ子として新潟の地で生まれ育ち、幼少期に父を亡くし、それ以降母親の女手一つで育った過去を持ちます。
なぜ裕福なはずの港区で子ども食堂を開いたのでしょうか。
「経済的に自立できる看護の仕事を選び、ご縁があって港区の施設で働きました。そこで、ひとり親家庭、特に母子家庭が取り巻く現状の大変さ、その渦中にいる子供がどれだけ苦しんでいるのかを肌身で感じたからです」
働きながら港区における子育ての実情を体験して、是正するための活動を行うべきと決意した宮口さん。子供の貧困は女性の貧困と大きく関係があると考え、女性の社会進出を目指す男女平等参画の運動にも並行して取り組みました。子ども食堂もその1つです。
精神的な貧困のおそろしさ。子も親も孤立していくのを止めたい
「孤立といった精神的な貧困に今、多くの人が晒されています。親御さんも孤立する危険があります。子供に充分に向き合うには、親自身の心身の健康が大切です。だけど、それが大きく欠落していると私は感じています」
みなと子ども食堂の立ち上げから参加して、宮口さんはもう1つの貧困の側面を見ることに。それは孤立といった精神的な貧困でした。
一人で食事をすることで孤立してしまう子供。子供と向き合うのに、どうすればいいか分からないことばかりで疲れてしまう親。親も子も、問題を抱えて孤立してしまうことが一番危険です。宮口さんが掲げる解決策は、「コミュニケーション」。子ども食堂を通して、訪れた人同士の「つながり」を作っていきたいとのことです。
港区福祉協議会や無償で参加するボランティアを始めとする多くの人に支えられ、子ども食堂の活動も19年の1月には4年目に。子ども食堂と同時に学習支援・居場所提供も行っています。
「ターゲティングをすることなく、規模は小さいけれど複数の問題に対処できるようにしていきたいです」
NPO法人みなと子ども食堂は、来る人を拒みません。特定の人だけに絞った活動はせず、誰でも利用できる食堂(居場所)をこれからも提供し続けていきます。