部下に仕事を任せられない? 原因は間違った褒め方にあった

結果よりもプロセスを褒める

 では優れた上司がどうやっているのかというと、日頃から部下の仕事を観察したり、相談を受けたりとコミュニケーションを取っている。どういうプロセスで仕事をしたかわかっているので、部下の得意な技術を的確に把握しているのだ。  仕事を任せられる上司になるために必要なスキルは、「上司の部下の褒め方」である。  日本人に限らないと思うが、多くの人が部下の「結果」しか褒めない。  「わかりやすいプレゼンだね。ありがとう」という結果を褒めるのは大事だが、心理学的に部下が成長しやすいのは、「プロセス」を褒める場合だ。人は、結果だけを褒められると、同じレベルのアウトプットを出すプレッシャーを感じるため、新しい挑戦に不安を感じて挑戦しなくなる。  また、結果というものは、組織の影響やタイミング、運など、多くのコントロールできない要素が含まれるため、途中で何かが起きるかもしれないと思うと、なかなか新しいことにチャレンジできない。  新しいことに挑戦しないと、なかなか部下は成長しない。むしろ、「細かいところまでデザインをこだわった、わかりやすい資料だね。」という風に、プロセスを褒めると、そのプロセスを継続する努力を守ろうとする(ここで言うところの、「細かいデザインへのこだわり」だ)。  外部の影響をうけやすい結果に比べて、自分の努力に依存する点の多いプロセスはクオリティを担保しやすく、クオリティを保ったうえで新しいことにチャレンジしやすい。今回の場合だと、デザインへのこだわりが必要な仕事を任せるのが部下の適正に合っていると言える。

適切な褒め方で部下を成長させる

 また、人間は周りに期待される人間になろうとする「ピグマリオン効果」というものがあるので、成長につながりやすいのだ。  こうして、仕事を細分化したプロセスを褒めるように心がけることで、部下の得意・不得意が把握できるようになる。新しい仕事を任せるときに、どのようなスキルが必要かわかっていれば、部下にその仕事を任せやすいし、部下に何を期待しているかを伝えて、期待通りのアウトプットが出てきやすくなる。さらに、部下は適切な褒め方で成長することができる。プロセスを褒めることは一石二鳥なのだ。  また、部下の得意・不得意を把握したうえで、役割分担をしていくことが重要だ(部下が若かったりプライドが高いと、役割分担に抵抗を感じるかもしれないが)。  時代の変化が激しい今の時代で、自分でもやったことがない仕事を部下に任せることが増えてきたり、ジェネレーションギャップもどんどん大きくなっている。  しかし、だからこそ、部下の得意・不得意を把握して、部下に合った仕事を振ってあげることが重要だ。今後とも、上司部下コミュニケーションについて、分析していこうと思う。 【山本マサヤ】 心理戦略コンサルタント。MENSA会員。心理学を使って「人・企業の可能性を広げる」ためのコンサルティングやセミナーを各所で開催。これまで数百人に対して仕事やプライベートで使える心理学のテクニックについてレクチャーしてきた。また、メンタリズムという心理学とマジックを融合した心理誘導や読心術のエンターテインメントショーも行う。クラウドワークスの「トップランナー100人」、Amebaが認定する芸能人・著名インフルエンサー100人に選出。●公式ホームページ ●Twitter:@3m_masaya ●Instagram:@masaya_mentalist
心理戦略コンサルタント。著書に『トップ2%の天才が使っている「人を操る」最強の心理術』がある。MENSA会員。心理学を使って「人・企業の可能性を広げる」ためのコンサルティングやセミナーを各所で開催中。
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