では、こうした引き寄せ手法に科学的根拠はあるのでしょうか? この点を考察してみたいと思います。
【カラーバス効果】
人間は、あるひとつのことを意識することで、それに関する情報が無意識に自分の手元にたくさん集まるようになる傾向があります。これを「カラーバス効果」と言います。
たとえば、「赤」を意識すると赤色の物ばかりが目につき、「青」を意識すると青色の物ばかり目につくうようになるのは体験されたことがある人も多いのではないでしょうか。
つまり、毎日ある願望を音読し、それを意識していると、自然とそれに関する情報が集まり、チャンスも広がっていく、ということはありそうです。
【プライミング効果】
また、人間は与えられた情報によって行動が影響される傾向があります。これを「プライミング効果」と言います。
たとえば記述問題を解かせる実験で、「上品な言葉」が並ぶテストを受けた学生と、「暴力的な言葉」が並ぶテストを受けた学生とで、テスト後の行動を比べると、「上品な言葉」の学生はおとなしい行動をとったのに対して、「暴力的な言葉」の学生は粗暴な行動をとったという結果が報告されています。
つまり、毎日一定の言葉や画像に接触していると、無意識にそれに近い行動をとる可能性が高くなり、願望達成の可能性を押し上げるということがありそうです。
【イメージトレーニング理論】
人間はある行動をイメージをしていると、実際にうまくいきやすくなるとされています。
たとえばバスケットボールのフリースローの実験で、「①毎日練習するグループ」と「②ほぼ練習しないグループ」「③毎日イメージトレーニングをするグループ」とに分けて、20日後にテストしたところ、「②ほぼ練習しないグループ」の成功率はほぼ変わらなかったものの、「①毎日練習するグループ」の成功率は24%上がり、更に「③毎日イメージトレーニングをするグループ」の成功率も23%上がったという結果が報告されています。
つまり、ある行動をイメージしていると、いざそのチャンスが来たときに成果を挙げやすくなるという可能性はありそうです。
【プラシボ効果】
人間はそれが出来ると信じていると、本当に成功する可能性が高くなるとされています。いわゆる「プラシボ(偽薬)効果」の類の話です。
たとえばパターゴルフを用いた実験では、被験者に対して「これは幸運のボールです」と言って、本当は(幸運でもなんでもない)普通のボールを渡して打ってもらうと、何とも言わなかった被験者に比べてパットの成功率が飛躍的に上がったとされています。
つまり、ある願望が叶うと信じていると、その実際にその願望が叶いやすくなるという可能性はありそうです。
上記はあくまで傍証の域を出ませんが、少なくとも毎日、願望の内容を音読し、叶ったところをイメージしていたら、その願望を実現する可能性がかなり高まることは蓋然性が高いと考えられます。
ただし、ここが重要なところですが、上記の行動をしていれば「必ず願望が叶う」というわけではありません。上記で示されたことはあくまでその「可能性が高まる」ということであり、「確率性」の問題を「必然性」の問題とごちゃごちゃにするとおかしなことになるので、注意が必要です。
同じように、「引き寄せの法則」を扱っているスピリチュアル本は、その多くが、その願望が叶う理由として「宇宙があなたの声を聴いてくれて、叶えてくれる」というような文脈で説明をしていますが、これもあまりに非科学的な暴論と言わざるを得ません。
前述したように、「引き寄せの法則」はスピリチュアルでも何でもなく、自分の意識を変え、行動を変え、願望実現の可能性を高めるためのさまざまな心理テクニックの複合体に過ぎません。そしてこの限りにおいて、私はかなり信憑性も高く期待効果も高い、きわめて優れた方法論だと思いますので、皆さんももっと気軽に利用してみてはいかがかと思います。
【高田晋一】
(株)成功データ研究所 代表取締役。作家。データアナリスト。早稲田大学第一文学部哲学科卒業、英国国立ウェールズ大学経営大学院Postgraduate Diploma取得。電通グループ各社で10年以上にわたり、リサーチ・ディレクターとして市場調査やデータ分析を担当。
成功哲学に関する研究をライフワークとし、これまでに1000冊以上の文献やデータを調査・分析して、独自の成功理論を確立。その後独立して「(株)成功データ研究所」を設立し、これまでの研究結果を書籍やセミナー、雑誌やWEBの記事などを通じて発表している。
著書に、『
「人生成功」の統計学 自己啓発の名著50冊に共通する8つの成功法則』(ぱる出版)、『
自己啓発の名著から学ぶ 世界一カンタンな人生の変え方』(サンクチュアリ出版)、『
大富豪の伝記で見つけた 1億稼ぐ50の教え』(サンクチュアリ出版)、『
成功法則大全』(WAVE出版)『
やってみてわかった 成功法則 完全実践ガイド』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など
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