働かない息子夫婦一家を一人で支えていた老人。煽られる世代間対立で語られぬ高齢者たち

不動産執行人業界にも高齢化の波が

 今回紹介した一例はもちろん一例に過ぎないのだが、決して“極端な一例”ではない。  良くある事例の一つで、今なお大黒柱として現役の子育てを強いられている高齢者の存在は、多くの人が思い描く以上に多い。  不動産執行に携わる執行人たちを見ても同じだ。  閉じゆく業界であるため、若い人はおらず、高齢者がお互いをフォローし合いながらなんとか現場をつないでいる。  それでも仕事の予定を失念、伝達ミス、報告書が上がって来ない、上がってきた報告書の内容がチグハグという事例の続発は否めない。昨年度も認知症で一人の執行人が職を離れた。  現在も疑わしい人が数人いるため、バックアップ体制が敷かれている。  それでも高齢者が中心となって業界自体の“終活”を遂行しなければならないのだ――。

高齢者といっても多種多様

 高齢者と言えども千差万別、機能低下の否めないものもいれば、今回のような現役で一家を担うもの、さらには今なお現役でバリバリと働き、若い世代にバトンを渡す気などさらさらなく、購買意欲も旺盛、旅行や趣味にも金を惜しまず、ブランド志向でおまけに性欲まで旺盛という高齢者。  このように多種多様な高齢者を一括りに考え、運転免許証を横並びに剥奪という考え方はどうだろう。  差し押さえ・不動産執行の現場で高齢者たちの元気さや働きっぷりを目の当たりにする限り、その考え方は回復困難な経済的窮地を誘発しているようにしか見えない。  超高齢化社会を迎え、自動車関連産業を基幹産業とするここ日本ではなおのことだ。  理不尽な自動車事故に心を痛め、撲滅に向けた極論に走りがちなこともよく分かる。このようなタイミングにあるからこそ冷静で広い視野を心がけるべきなのではないだろうか。
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本当に高齢者は敵であり社会悪なのだろうか
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