「ハーフってかっこいい」に潜む「差別」。「身近な多文化共生を考える」ワークショップレポート

「日本人じゃないから、がさつなのね」

コーリア留奈さん

「ハーフだから」「見た目が日本人じゃないから」という理由で、不快な思いをしたことがある人も多い。アメリカと日本のハーフであるコーリア氏は、生まれも育ちも日本である一方で、その「外国人っぽい」見た目ゆえに、心ない言葉に傷付いたことがあるという。  ミス鎌倉としての活動をしていたころ、日本人の女性2人と一緒に振袖を着て畳の部屋で行われた宴席に参加した。3人とも足が痺れたにもかかわらず、その場にいた男性からコーリア氏だけが「君は日本人じゃないから、正座で足が痺れるんだよ」と言われた。  岩澤氏も、アルバイト先で「日本人じゃないからがさつなのね」と嫌味を言われた。寿司屋で接客をしていた際には、客から「留学生なの?」「日本の文化が好きでお寿司屋さんで働いているの?」「どうしてそんなに日本語が上手なの?」と質問攻めにあった。  実際は、その寿司屋が家から近いから、という理由だけだった。「お客さんは私を見た目だけで判断し、日本が好きで、日本の文化に興味を持った外国人留学生が一生懸命日本語を勉強してわざわざ寿司屋で働いている、というストーリーを勝手に作り上げてくる。日本語が第一言語である日本人であることを伝えると、ガッカリされる」という。 「ステレオタイプは誰もが抱くもの。しかし、その勝手に作り上げたイメージを相手に押し付けたり、期待を裏切られたことを伝えたりすることで、傷つく人がいる」と、岩澤氏は説明する。

「ハーフってかっこいいね」というステレオタイプが「残念ハーフ」を生む

 日本人が一般的にハーフに抱くイメージは、良いものが多い。容姿端麗であること、語学に長けていること、海外との架け橋になれるような人間であること。「ハーフってかっこいい」という固定観念が、ハーフの人たちへのハードルを、上げていく。これらのハードルを超えないハーフの人たちのことを「残念ハーフ」と呼ぶ人もいる。  実際には、日本で生まれ育って日本語しか話さないハーフもいる。勝手にハーフというイメージを作り上げ、そのイメージに合わない人を「残念ハーフ」と呼ぶことは、如何にも偏見に満ちた考え方だろう。

「多文化共生」は「他文化強制」じゃない

「ハーフ」という言葉は「半分」という意味のため、ネガティブに聞こえることもある。そのため「ハーフ」ではなく、「ダブル」や「ミックス」という言葉を使った方が良いのではないかという議論がある。岩澤氏はこうした議論に対して、こう話す。 「ハーフ、ダブル、ミックスのどの言葉が適切なのか、という議論があると聞くけれど、そのカテゴライズそのものがなくなればいいと思っている。ハーフ、というカテゴリーではなく、個として相手を認めること、相手に興味を持つこと。ハーフ、という言葉を使わない会話が、理想的」  これからますます多文化共生の意識醸成が求められていく日本。自分の持ってしまっている固定概念を省み、個としての相手を認め、尊重する意識を持つことが大切であると改めて感じた。 <取材・文/汐凪ひかり>
早稲田大学卒業後、金融機関にて勤務。多様な働き方、現代社会の生きづらさ等のトピックを得意分野とし、執筆活動を行っている。
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