まず、毎日新聞の記者が質問した
質問7.です。
“中西会長もメーカーの一人として議論に参加されたと理解しておりますが、その上で、今回の提言についてどのように受け止められたかということと、今回の経団連の提言を長期成長戦略とどのように整合して進めていくかということに言及いただければと思います。”
これは、平たく言えば地球温暖化対策会議パリ協定(2016年に締結)への日本の対応指針を示します。もはや
唯一残った原子力発電の存続理由といえます。
回答7.で、中西氏は水を得た魚のように生き生きと語り始めます。
“パリスアグリーメント(パリ協定)に対応する長期戦略ということで、大変珍しい事例ですけれども、経済産業省と環境省と外務省が3省共同で主催された懇談会ということで何回か議論を重ねた上で提言をまとめた”
パリ協定では、2030年までに2013年比で温室効果ガスを26%削減することが求められています。誤解が多いですが、この協定に罰則事項はありません。この点で米中離脱を引き起こし実質的に失敗に終わっていた京都議定書と根本的に異なります。
懐かしの排出権取引は市場が完全に崩壊*し、無意味となりましたので歯牙にもかけられていません。かつては利殖にと電気屋さんなどでプレゼントとされることも多く、無意味な紙くずとなった排出権が手元にある方もけっこういると思います。パリ協定は、かつての京都議定書時代に比べるとかなり現実的な内容となっており、結果として中国と合衆国が率先して署名しています。但し、合衆国は翌年、脱退しました。これは、野心的な内容ながら中国と合衆国が加わらなかったり、野心的な合意を模索した結果合意に至らなかったりした過去の経験や、排出権取引市場の破綻など野心的に過ぎる協定は意味が無く、むしろ日本のようなムーンショットに走り、福島核災害のような全人類的な巨大公害災害を起こす輩も出てくるなど、有害無益であると言うことを学習した結果と考えられます。
<*参照:
“実質的に崩壊した排出権取引 – OurWorld 日本語” 2012年09月25日 フィオナ・ ハーヴェイ The Guardian (国連大学ウェブマガジンより)>
パリ協定は、少なくとも2030年までは十分に達成可能な内容です。それより先は、今後改定されてゆきますし、そもそも25年、30年先の目標は、その間の情勢変化で吹っ飛んでしまうものです。好例が福島核災害と原子力ルネッサンスの崩壊、そして新・化石資源革命と再生可能エネ革命です。京都議定書当時(1997年)には予想だにされなかった現実です。京都議定書からパリ協定までの僅か19年で世界は激変していたのです。なお、福島核災害によって全人類に核公害をまき散らすこととなった原子力ルネッサンスは、その原点が京都議定書にあることは紛れもない事実で、このことには猛省をせねばなりません。
しかし日本では相変わらずヒノマルゲンパツPAの唯一と言って良いよりどころとなっています。
“その中で私が提言に繰り入れるれるべきと何回もご提案し、事実そういう反映していると思うんですが、それと今回の私ども提言とは全く機を一つにするものだと思っています。”
これは応答だけでは何を言っているのか分かりませんが、提言書の本文に
めまいがするようなゴミ構想の羅列が見られます。1980年頃からのNEDO国家プロジェクトの失敗の山が一度は消えたのですが、またぞろ復活勢揃いです。
“パリ条約(これは誤り、パリ協定)というのは80%のCO2エミッション、とまで減らすというすごいコミットメントが、あれコミットメントっていうかどうかなんですけど、ゴールがある”
まず大切なことですが、パリ協定は中西氏がなぜか冒頭英語で呼称しましたが、Paris Agreementであって、
協定(合意)です。条約=Treatyとは異なります。
中西氏がわざわざ英語呼称しながら、日本語では誤ったのかは理解できません。また中西氏は、パリ協定では温暖化ガス排出を80%削減せねばならないとおどろおどろしいことを言いますが、これは2050年までの目標です。今から31年後になりますが、反対に今から31年前と言えば1988年、昭和63年です。日本はバブル景気に湧き、一方で昭和天皇が病臥していたときです。このときに計画された国家事業のほとんど(すべて)は大失敗の後に消え失せています。とくに原子力、エネルギー関連は莫大な浪費と失敗と核事故・核災害、核公害でてんこ盛りです。
従って、2030年はともかく、
2050年に向けてた過大な目標設定で実現不能且つ弊害の大きな計画を立てる意味がありません。実は、この2050年の
ほぼSFと言って良い計画がエネルギー基本計画の誇大妄想と言って良い原子力発電の目標設定の唯一の理由となっています。エネルギー源としてはコスト、安全性、信頼性、安定性という点からは、もはや正当性がまったくありません。
なお、2030年の2013年比26%と言う目標は達成できるのでしょうか。それは十分可能です。不幸なことに安倍政権における偽装経済成長、現実には長期リセッション(景気後退)については、統計操作や市場操作によって荒れ果てている金融関連の統計、市場ではなくエネルギー消費量や温暖化ガス排出統計が日本経済の一貫した縮小傾向を示しています*。この様に別統計によって真の値を見極める方法は、ブレジネフ末期以降のソ連邦経済を分析する際に用いられた手法です。35年ほど昔には、世界でも最も優れた正確な統計を残しているとされていた日本は、今では偽装粉飾や抹消が横行し、旧ソ連邦最悪期よりも著しく劣った状況にあります。まるで日中戦争、第二次世界大戦中の日本です。
日本における温暖化ガス排出の推移(1990-2017)
注)2013年を基準年とすると縦軸で1100が2030年の目標値
全国地球温暖化防止活動推進センターより*
<*参照リンク:
全国地球温暖化防止活動推進センター>
京都議定書では日本にとくに不利な基準年1990年が設定されていましたが、パリ協定では2013年比26%減を2030年までにですので、天然ガス火力(新・化石資源革命)と風力を主力に太陽光を加えたもの、更に陸上輸送のうち鉄道の電気化、自動車のEV化や高効率化、船舶の天然ガス化など、現在進められている常識的な対策で十分に対応できると思われます。
むしろエネルギーコストを激増させ、市民からお金を巻き上げるだけの核燃料サイクルや水素(きわめて効率の悪い、原子力の余剰エネルギー貯蔵手段)のような全く無意味なものを国策として強行することにより経済を破滅させることでより大幅な温暖化ガス排出減を実現するというのでしょうか。
“それでもって日本の発言力が、いつもこれ発言じゃなくて弁解じゃないかと、という風にとらえられている現実を踏まえると、色んな手を尽くしてそれをやっていきますっていう宣言をすることが非常に重要である”
要は、京都議定書で見栄を張って無茶な目標設定したら当然のごとく日本は未達成で、罰則は無いものの、外交交渉の場で頭が上がらず言い訳ばかりさせられて、格好つける場がないという無能な外務官僚と政治業者の承認欲求に過ぎません。
そのようなゴミに市民が犠牲になったり、ポンコツ原子炉を無理に操業したり核燃料サイクルという誇大妄想の代物に何十兆円も市民のお金と税金を湯水のごとくつぎ込む理由にはなりません。誇大な目標設定をしたのなら、役人と政治家は相手の靴を嘗め続けるのが仕事です。
“議論をまさにみんなの知恵と時間とお金を使ってやろうじゃないか。”
これは、
議論と称して結論は最初からすでに決まっているペテンのようなものです。市民が相手にする必要はありません。
役人と政治業者は失敗した外交の場では相手の靴を嘗め続ければ良いですし、駄目実業家はさっさと退場すれば良いのです。失敗した連中の見栄のために無意味なお金と犠牲を市民が提供する必要は全くありません。