ドライバーにとっては体を壊しかねないこのバラ積み・バラ降ろし作業。
無論パレットに積まれたままの状態でトラックに積めれば、作業時間の短縮にもなるし、なにより身体的負担が一気に減る。だが、それでも「手積み・手降ろし」の光景が現場からなくならないのは、荷主側の以下のような都合があるからだ。
1.積載量を増やしたい
パレットで積むと、どうしても荷物と荷物の間に隙間ができ、トラックに積める荷物の量が少なくなる。運送料を支払う荷主からすれば「空気」はできるだけ運ばせたくないのだ。
特に、洋服をハンガーにかけた状態で運ぶ、いわゆる「ハンガー車」などは、荷が軽い割に場所を取るため、運送費も割高になりやすい。そのため、なるべく要領よく運べる手積み手降ろしが多くなるのである。
2.パレットの紛失
自社のパレットに荷物を積んで運ばせると、後日そのパレットが紛失するケースがよくある。回収や管理なども大変であるため、パレットはあくまでも保存用として使用し、輸送用としては使わないとする業者が多いのだ。
このような彼らの都合から、もともとパレットに積まれているものを、トラックに積む際にわざわざバラ積みして運ばせ、到着した先で、再度現場にあるパレットに積み直させている荷主も多い。
こうした手積み・手降ろしによるトラックドライバーへの負担は、体力的なものだけではない。
バラ積み・降ろしをすると、作業時間が長くなる分、順番を待つ他のトラックの待機時間も長くなるため、ドライバー全体の拘束時間の長時間化にも繋がってくる。場所によっては積み込みまでに2~3時間待たされることもザラだ。
もうすぐ夏がやって来る。エンジンを切った車内で強いられる長時間の荷待ち、炎天下・サウナ状態の荷台での荷物数千個の積み降ろし。
彼らの労働環境が少しでも良くなることを願うばかりだ。
【橋本愛喜】
フリーライター。大学卒業間際に父親の経営する零細町工場へ入社。大型自動車免許を取得し、トラックで200社以上のモノづくりの現場へ足を運ぶ。日本語教育やセミナーを通じて得た60か国4,000人以上の外国人駐在員や留学生と交流をもつ。滞在していたニューヨークや韓国との文化的差異を元に執筆中。
フリーライター。元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働環境問題、ジェンダー、災害対策、文化差異などを中心に執筆。各メディア出演や全国での講演活動も行う。著書に『
トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書) Twitterは
@AikiHashimoto