米政府のファーウェイ制裁。スマホは発売延期、世界経済への影響も

グーグルのサービスはどうなる

 一部でファーウェイ製の携帯端末ではAndroid OSやグーグルのサービスが利用不可となる可能性が報じられ、Twitterでも日本のトレンドで上位に入るほど話題となった。  グーグルはAndroid OSやその他のサービスを提供するが、Android OSは無償公開するオープンソースで一般に入手可能なソフトウェアであるため、Android OS自体は規制対象にならない可能性が高い。ただ、グーグルが提供するプロプライエタリなソフトウェアやサービスは規制対象の可能性が高く、ファーウェイ製の携帯端末では利用不可となる事態もあり得なくはない。  ファーウェイは既存の携帯端末へのサポートは継続すると表明し、グーグルも既存の携帯端末へのGoogle PlayやGoogle Play Protectのセキュリティは引き続き機能すると案内した。保守関連の取引が許可されたことからも、短期的には既存の携帯端末への影響は軽微だろうが、中長期的には不透明な状況だ。グーグルは影響を検討かつ米国政府の措置を順守する意向を明確化しており、将来的に発売されるファーウェイ製の携帯端末は影響を受ける可能性がある。

米国や日本の企業も大きな打撃か

 NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクなど大手通信事業者各社はいずれもファーウェイから携帯端末を調達しているが、すでに影響が生じている。  NTTドコモはHUAWEI P30 Pro HW-02Lの予約受付を中止、KDDIと沖縄セルラー電話はHUAWEI P30 lite Premium HWV33の発売延期、UQコミュニケーションズやソフトバンクおよびウィルコム沖縄はHUAWEI P30 liteの発売延期を決めた。特に大手通信事業者は各社がサポート窓口となるため、先行き不透明な状況でこの判断は当然だ。すでに発売済みの携帯端末でも、ファーウェイ側で製造が停止または縮小すれば調達が難しくなる場合がある。  また、基地局など主要な通信設備では大手通信事業者としてはソフトバンクとワイヤレスシティプランニングがファーウェイを採用するが、保守関連の取引は認められており、すでに発売済みや調達済みの製品に関して直ちに深刻な影響が生じることはなさそうだ。
「HUAWEI P30 Pro HW-02L」

予約停止したNTTドコモ向けの「HUAWEI P30 Pro HW-02L」

「HUAWEI P30 lite Premium HWV33」

発売延期したau向けの「HUAWEI P30 lite Premium HWV33」

 一方、サプライヤは打撃を受ける可能性が高い。ファーウェイのサプライヤには日本企業も多く、AGC、京セラ、ジャパンディスプレイ、住友電気工業、ソニーセミコンダクタソリューションズ、TDK、東芝メモリ、日本電産、パナソニック、富士通、三菱電機、村田製作所などが挙げられる。供給する製品が規制対象ならば供給不可となり、そうでなくともファーウェイ側で製造または縮小すれば供給の中断や縮小も余儀なくされる。供給する製品やファーウェイの状況次第では日本のサプライヤへの影響は間違いなく生じる。  すでに米国のルメンタム・ホールディングスはファーウェイへの出荷停止に伴う業績の下方修正を発表した。これから影響範囲が確定する中で、日本企業を含め同様の事象が続出するかもしれない。世界における2018年のスマホ出荷台数でファーウェイは2位に肉薄する3位まで成長した。サプライヤにとって巨大なファーウェイは大型顧客となる場合も多く、米政府がファーウェイに制裁を発動した結果、米国やその同盟国の企業まで打撃を受けることは覚悟しておかなければならない。
次のページ 
解決の糸口は外交か?
1
2
3