金日成総合大学博士課程留学中のオーストラリア人、アレック・シグリー氏。妻は日本人で、休暇の際は日豪に帰国する
北朝鮮の金日成総合大学は、同国のエリートが集う最高学府であり、政府の根幹となる人材を多数輩出するいわば“北朝鮮の東大”ともいえる。
その実態は明らかにされていないが、同大学の博士課程に、日本人の妻を持つオーストラリア人学生が留学している。アレック・シグリーさん(29歳)である。
金日成総合大学に通うアレック・シグリー氏の身分証
欧米に時折存在する「朝鮮ファン」の一人に過ぎなかった彼が、金大への留学を夢見るようになったのは2011年。
そうして念願叶い、2018年4月に入学が許された。入試はなく、「自己紹介書」と、健康診断書の提出のみだったという。妻の森永友果さんとは中国の大学に留学していたときに出会い、現在は日本と北朝鮮の遠距離婚生活を送る。
最初のデートの誘いは、「僕の部屋で北朝鮮の切手を見ませんか」だった。友果さんは当初、北朝鮮についてまったく興味がなく「変わった人だな」という印象しかなかったというが、熱心なアプローチと誠実な人柄に陥落。約5年の交際を経て結ばれた。
友果さんも現在はすっかり「知朝家」となり、日朝関係や在日コリアンの問題にも関心を寄せるようになった。アレック氏が帰国した際は、朝鮮の学生用カバンを夫婦お揃いで持ち歩くほど。
ちなみにカバンは、男子用、女子用とあり、女子用はデザインに多少ひねりを加えていることが窺える。異性用のデザインが好きなので持っていたい、という人は今の所いないとか。
「平壌カバン工場」のロゴ入り
こちらは女子用
「女子大生用」と書かれた商品タグがついている
金大の学費は3000ドル、博士課程の場合は年間3500ドルと格安。寮費(生活費)は1日11ドルだ。「寮で出る料理は美味しいし、生活にまったく問題はありません」という。
大学の寮では、朝鮮の学生とも交流があるが、部屋は別々となっており、外国人留学生の部屋はインターネットと、外国書物の持ち込みが可能。
オンラインゲームも可能で、以前部屋でゲームをして1位になった際、主に韓国のゲーマーの間で「この北朝鮮のアカウントは誰だ!」と騒動になったという。
このことを知った筆者の知人の韓国人は、「韓国人ゲーマーの間で話題持ちきりでした。彼だったんですね。ようやく謎が解けた」と語る。