日本の男性は結婚するとモラ夫になることを、多くの女性は肌で知っている
上記の調査報告書によると、日本の未婚女性が、結婚に最も不安に思うことの第1位は、「配偶者と心が通わなくなる、不仲になること」である(61.2%)。
この連載の読者の皆様には、これが何を示しているか、改めて言わなくてもおわかりいただけると思う。しかし、改めて、言おう。
日本の男性は、結婚すると、妻を支配し、妻と心を通わせなくなる。日本の女性たちは、このことを肌で知っている。すなわち、結婚すると日本の男性はモラ夫になる。
女性は、幸福な家庭を築くパートナーを得ることを結婚と捉える。他方、モラ夫は、自らの世話、家事育児をしてくれる妻を得ることを結婚と捉える。結婚によって得ようとするものが完全にすれ違っているのだ。女性たちは、このことを肌で知っており、幸福な結婚をイメージできない。
夫婦別姓に強硬に反対する者は、モラ夫、モラ文化の応援団
日本の若い男性たちをみると、昭和スタンダードなハードモラ夫は減ってきたように思う。しかし、他方、ソフトモラ夫は着実に増えきた。
結婚前には思いやりも深く、結婚後も嫌がらずに家事分担を平等にこなす、そんな男性が第1子出産でモラスイッチが入り、モラ夫になる事例を紹介した。離婚実務に携わっていると、このような事例にしばしば出会う。例外的な事案ではないのである。
では、日本のモラ文化(モラ夫を育て許容する社会的文化的規範群)とは何か。
まず、今日も根強い、明治時代に完成した「伝統的」家族観や、明治から昭和にかけて定着してきた性別役割分担がある。そして、モラ文化を支えてきた法制度の根幹も、戦後の家族法改正を生き延びてしまった。すなわち、戸籍制度と夫婦同姓強制主義である。
妻が、夫の姓を名乗り、夫の戸籍に入ることは、夫の支配に入ることの象徴である。戸籍をみれば、筆頭者の夫、次に妻、そして、子どもたちが年齢順に並ぶ。「伝統的」家庭内序列そのものである
戸籍や夫婦同姓強制主義の擁護者は、すなわち、モラ文化の擁護者でもある。擁護者は、同姓か別姓かの他人の選択まで、なぜ縛ろうとするのか。それは、選択制にすれば、夫婦同姓の社会的文化的規範性が失われ、モラ文化も弱まるからに外ならない。
離婚弁護士として、私は、何度も経験している。モラ被害妻が、モラ夫から真に解放されたと感じるのは、離婚を認める判決を貰ったときではなく、モラ夫の戸籍から抜けた、自らの新戸籍を手にした時である。
モラ文化の桎梏から逃れないと、日本に将来はない。次回は、明治時代に完成したモラ文化について解説する。
【大貫憲介】
弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。著書に『
入管実務マニュアル』(現代人文社)、『
国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『
アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし~モハメッド君を助けよう~』(つげ書房)。ツイッター(
@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中