進むLGBTへの理解、「令和」に引き継がれた課題は? 東京レインボープライド参加者の声から

 セクシュアルマイノリティへの理解を求めるイベント「東京レインボープライド2019」が4月28日と29日に代々木公園(東京都渋谷区)で開催された。支援団体や協賛企業によるブースが軒を連ね、LGBT当事者や一般参加者が多数来場した。28日にはパレードも行われ、過去最多となる約1万1000人が渋谷の街を練り歩いた。  ここ数年でLGBTへの理解が進んだが、当事者たちはこの変化をどのように受け止めているのか。またどのような課題が残されているのか。会場にいた当事者に話を聞いた。

理解は進んだ。けど“手のひらを返された”ような違和感も

瞬さん(30代)

瞬さん(30代)

 瞬さん(30代)は、トランスジェンダーの女性。性別に違和感を持ったのは、小学生の頃だったという。 「小学生のとき、理髪店で髪を耳の見える短さまで切られたことがありました。なぜかわからなかったんですが、とても苦しくて父親に泣きついたんです。その後、『3年B組金八先生』というドラマに上戸彩さん演じる性同一性障害の生徒が登場します。このドラマをきっかけに性同一性障害というものの存在を知り、自分もそれなんだと確信しました。  高校では、制服の学ランを着なければならなくてとても苦しかったです。学ランを着ていることで周囲から男だと思われることにも悩みました。結局、高校を辞めてしまい、通信制の高校に入りなおしました。制服がなかったのでとても助かりました。  高校生の頃、好きな男性に告白したのですが、『急に女だと言われても、男にしか思えない』と言われて振られてしまいました。それ以降、化粧をして、女性ものの服を着るようになりました」  瞬さんの身長は185センチメートル。背が高く、スタイリッシュだが、その反面とても目立ってしまう。女性として生活する中で、心無い言葉を掛けられたこともあったという。 「すれ違いざまに『オカマ』と言われたり、『おい、お前男だろ』と街中で叫ばれたり。電車で座っていたら、目の前に立っていた母親が、まだ物心つかないような小さな子供に『前の人見て』と囁いていたこともありました」  トランスジェンダーの女性として、偏見に晒されてきた瞬さんだが、近年LGBTへの理解が急速に進んでいるのを感じている。 「レインボープライドには2014年から参加しています。やはりここ数年でLGBTへの理解が急速に進んだと感じています。それは良いことなのですが、変化が急に訪れたので、世の中に“手のひらを返された”ような違和感も抱いています。今まで差別されてきたのに、突然受け入れると言われて、少し戸惑っているような状態です。  今後は、LGBT当事者の個人が“ゲイ”や“トランスジェンダー”といった属性で捉えられるのではなく、個人として見てもらえる時代がくればいいと思っています。一人ひとり違うんだから、LGBTへの正しい対応なんてないんですよ」

取材中にカミングアウトしたバイセクシャルの女性

 続いて筆者は、2人連れの女性に声を掛けた。2人とも当事者ではないといい、「色々なことに関心があるので見に来ました。世界が広がった」と話していた。  ところがインタビューをしている最中に、片方の女性(20代)が「実はバイで」とカミングアウト。一緒に来ていた友人にも伝えていなかったという。 「カミングアウトしていないため、日常生活で困ることはありません。ただ、女性のことも好きなのですが、友だちであることが前提になるため、恋愛をするのが難しいです」 昨年は、自民党の杉田水脈衆院議員が『新潮45』に寄稿した「『LGBT』支援の度が過ぎる」が話題になった。この件については「杉田議員の主張を聞いて、自分が差別されているのだということが明確になった。杉田議員が寄稿を撤回したり、謝罪したりしていないのは問題だと思います」と憤る。
次のページ 
東京レインボープライド、アライの参加者が増加
1
2