男性も女性も出世が全てじゃない。求められる真の「働き方の多様化」

男性だって、転勤したくない人もいる

 大手金融機関では、「地域型総合職」という職制が一般的になりつつある。いわゆる、転勤を伴わない総合職、ということだ。転勤の可能性がある職制と比較し給料に差はあるものの、総合職として様々な業務に携わることで、いわゆる「一般職」と呼ばれるような事務を行う職制との差別化を図っている。  この「総合職」「地域型総合職」「一般職」という職制において、ほとんどの男性が「総合職」を選ばざるを得ないというのが現状だ。もちろん、「地域型総合職」「一般職」の採用において、明確に男性が排除されているわけではない。しかし、蓋を開ければ、それらの職制で入社する男性はほぼ存在しないと言っても過言ではないだろう。「女性しか採用しません」とオフィシャルに謳うことは出来ない故に、ピュアな気持ちで「地域型総合職」を志望する男性もいる。しかし就職活動の過程で「男性は、基本的にはこの職制は受けないよ」「本当に地域型でいいの?」と言われてしまう。

「転勤したくない」「昇進したくない」と、「仕事にやる気がない」はイコールじゃない

 働き方を見直す、というこの時流において、個々の働くことへの姿勢は多様になって然るべきである。実際は、転勤したくない男性だっているはずだ。出世や高い給料はいらないから責任を負いたくない、という人もいるだろう。また、家族の介護等、何らかの事情で現在の居住地を離れることが出来ない人もいるはずだ。  こうした男性が「地域型総合職」や「一般職」として就職することを、はたして会社はどのように判断するのだろうか。昇進試験を受けたくないという人を、キャリア申告書に勤務地希望を明記する人を、会社はどのように見るのだろうか。それだけを以て「仕事に対してやる気がないひと」「会社にとって戦力にならない人」と判断するのは、この時代において、いかにもナンセンスなことだと思う。  働く人にとっての「幸せ」とは何なのか。これは、「働き方改革」という時流も手伝ってか、深く個々に問いかけられるトピックになっている。働くことへの価値観と実際の働き方がミスマッチであることほど、苦しいことはない。性別・年齢問わずに、多様な働き方を自分でチョイスするべき時が来ていると思う。これまでの常識にとらわれない、柔軟な働き方をできるように。個々の意識の変化とともに、会社組織全体の変化も求められている。 <文/汐凪ひかり>
早稲田大学卒業後、金融機関にて勤務。多様な働き方、現代社会の生きづらさ等のトピックを得意分野とし、執筆活動を行っている。
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