日本の宇宙スタートアップ「Synspective」、2020年に衛星打ち上げへ。レーダーによる地球観測と宇宙ビッグデータの可能性

打ち上げ契約の締結

Synspectiveとアリアンスペースによる、打ち上げ契約の締結の様子 (C) Stephane Israel/Arianespace

日本の宇宙スタートアップが2020年衛星打ち上げへ

 日本の宇宙スタートアップ企業「Synspective(シンスペクティヴ)」は2019年4月18日、フランスのロケット会社「アリアンスペース」との間で、人工衛星「StriX-α」の打ち上げ契約を締結したと発表した。  StriX-αはSynspectiveにとって最初の衛星で、打ち上げは2020年のに予定されている。  StriX-αは、小型・低コストな衛星ながら、レーダーを使って地表を撮影することができる衛星で、夜間や雲がかかってても観測ができるという特徴がある。そしてそのデータは、ビジネスや防災、未来予測など、さまざまな分野に利用できると期待されている。

日本の宇宙スタートアップ「Synspective」とは?

 Synspectiveは2018年2月に設立された、日本の宇宙スタートアップ企業である。創設メンバーらはもともと、内閣府の革新的研究開発プログラム「ImPACT」で、StriX-αのもととなる技術の研究・開発を行っており、それを事業化するために立ち上げられたのが同社である。  StriX-αは質量約150kgの小型衛星で、「合成開口レーダー(SAR)」という、レーダーを使って地表を観測する装置を積んでいることが最大の特徴である。  衛星から地球を撮影する場合、多くはデジタルカメラのような「光学センサー」を使う。Google Earthなど地図アプリでもおなじみの衛星写真の多くは、この光学センサーが撮影している。  光学センサーの撮影画像は、誰が見てもわかりやすく、また細かいものまで写すことができる。しかし、地球の一日のうち半分は夜であり、またある場所に雲がかかっている率が40~50%ほどあるため、したがって光学センサーで見えるのは地球全体の4分の1程度でしかない。  一方、SARは衛星から電波を出して、地表に当たって跳ね返ってきた電波の反射波を画像にする。あまり細かいものは見られないが、夜だったり、雲がかかっていたりしても、地表に何があるかを見ることができる。つまり、光学センサーでは見られない、地球の4分の3の姿を撮影することができ、光学センサー衛星とは異なるサービスを展開できる。また同時に、光学センサー衛星とは異なる質の画像が撮れるため、両者の画像を組み合わせることで、新たな価値をもったデータを提供することもできる。  SARを積んだ衛星はこれまでも世界中で打ち上げられているが、従来は技術的な問題から大型の衛星にしか積めず、また開発コストの問題もあって、その多くは国の宇宙機関などが保有、運用していた。しかし近年の技術革新により、小型の衛星にも積める技術が確立されつつある。SynspectiveのもととなったImPACTの研究もそのひとつだった。  StriX-αの打ち上げは2020年の予定で、最終的に約25機の衛星を打ち上げて衛星群(「コンステレーション」という)を構築し、地球の全体を準リアルタイムで観測し続けることを目指している。  また、Synspectiveとアリアンスペースは、今回の打ち上げ契約に加え、将来の協力関係を構築することを目標とした、戦略的パートナーシップ契約にも調印した。
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「宇宙ビッグデータ」の可能性
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