日本女性たちもモラ文化(男尊女卑、性別役割分担等モラ夫を育て許容する社会的文化的規範群)のもとで育っているので、モラハラの異常性に気が付かないことも多い。
例えば、父が家長として君臨している家庭で育てば、夫の君臨も受け入れてしまうことが多い。そして、家長として君臨するモラ夫は、「お前が俺を怒らせる」と自分が怒ることまでも妻に責任転嫁する。妻は、怒られるのを怖れ、自分の言動に気を付けるようになり、ますます自責的になる。
怒らせないようにすることが習慣化してしまうと、夫が怒るであろう行動の選択は難しくなる。しかも、日本社会では女性は差別され、給与も安いので、離婚した場合の経済的不安がある。
子には父親が必要との思いもあり、離婚が頭をかすめても、自らそれを打ち消してしまう。周囲からも、「我慢が足りない」「男なんてそんなもん」と言われ、身動きができなくなる。自らの結婚を「失敗」にしたくないとの思いや、もしかしたら、夫が何らかのきっかけで優しくなるかも知れないとの期待も捨てきれない。その結果、モラハラを受け続けることを(消極的に)選択してしまう。
しかし、心も身体も、自らの選択についていけない。その結果、感情が平たんになり、夫の帰宅時間が近づくと憂うつなる。ストレスが身体症状化し、心身症になったり、様々な疾病を引き起こしたりする。更年期が早まったりすることもある。突然涙が出たりなどの精神症状が出ることもある。
モラ夫から逃げない自分を合理化するため、「夫は弁が立つ」「夫はソトヅラがいい(から私は理解されない)」「別居、離婚したら何をされるかわからない(ので怖い)」などと考え始め、自ら信じ込んでしまう。それが、モラ夫への従属度をさらに高めることになる。
結論から言うと、モラ夫との離婚は難しくない。日本では、3組に1組は離婚している。離婚は、もはやありふれたことなのだ。確かに、経済的自立は必要になるが、モラハラ被害を受けなくなる解放感、幸福感は、経済的な苦労を補って余りある。
モラ夫が改心することは極めて稀である。もしも、あなたがモラハラ被害を受けているのであれば、その被害から逃げることも考えた方がよい。
この10連休、夫が自宅にいることで気が重い、重苦しいのであれば、あなたも被害妻である可能性が高い。
まんが/榎本まみ
【大貫憲介】
弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。著書に『
入管実務マニュアル』(現代人文社)、『
国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『
アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし~モハメッド君を助けよう~』(つげ書房)。ツイッター(
@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中