次は、別の「等」の話だ。
パチンコ業界関係者でも気付いていない人が多いのだが、今回のギャンブル等依存症対策推進基本計画において、「等」の一文字が追加されている。
3月に実施されたパブリックコメント募集の際に公開された案文には無かったものが、閣議決定された確定文には追加された。
どこに追加されたのか。それは、パチンコ店における店内ATMの撤去に関する部分である。
3月の案文では、「ATM等の撤去」と書かれていた。ちなみに、この「ATM等」の「等」の中には、デビットカードシステムの廃止という意味も込められている。
それが今回の確定文では、「ATM等の撤去等」と書き換えられているのだ。
今回の基本計画は、競馬、競輪・オートレース、競艇、パチンコと、4つの対象それぞれ別々に分けられ対策が明示されており、パチンコ以外の公営ギャンブルの対策では、「ATM等の撤去」となっている。これは案文も確定文も同様だ。
しかしこと、パチンコだけが「ATM等の撤去」から「ATM等の撤去等」に書き換わった。
パチンコ店のATM撤去についてのみ付いていた「等」
パチンコ店内のATM撤去については過去にも
書いたが、少なくとも公営ギャンブル場に設置されているATMと、パチンコ店に設置されているATMではその仕様や機能は大きく異なる。
公営ギャンブル場に設置されているATMは、街中のどこでも見かける通常のATMであり、個人融資等の資金調達も可能となっているが、パチンコ店のATMは預貯金以外の金銭の引き出しが出来ないばかりが、日ごと、月ごとの利用制限機能も付与されている。
基本計画が閣議決定された同日付けで公開された、内閣官房ギャンブル等依存症対策推進本部事務局がまとめた「『ギャンブル等依存症対策推進基本計画(案)』に関する意見募集(パブリックコメント)の結果」を見ても、パチンコ店のATM撤去については賛否両方の意見が乱れ飛んでいる。
結論から言えば、行政がなぜパチンコ店のATMの撤去についてのみ「撤去等」と「等」の文字を付けたのかは分からない。一部のパチンコ業界関係者からは「これで撤去しなくて良いのでは」と期待を寄せる声も聞かれるが、そんな安直な話でも無いと思われる。唯一言えるのは、この「等」という一文字が、行政文書の効力を一歩後退させたという程度か。
「等」は不思議な言葉である。
時にそこに在るものをわざと隠したり、時に存在しないものを読み手にイメージさせたりする。ただその「等」という文字には、書き手の様々な思惑があることだけは知っておくべきだろう、等(など)と思ったりする。
<文・安達 夕
@yuu_adachi>