―― 移民受け入れの是非については議論がわかれるところかもしれませんが、今後日本で外国人が増えていくのは既定路線です。そうであれば、外国人と共生していく方法を探るべきです。安田さんは新著『団地と移民』(KADOKAWA)で、多くの外国人が居住する団地に注目しています。
安田:「団地」と聞くと、「老朽化する団地」や「限界集落化する団地」といったように、戦後の負の遺産と捉えられることが多いと思います。私自身もそのような認識を持っていました。
しかし、現在の団地には外国人がどんどん入居するようになっており、これまでとは大きく様変わりしています。団地の中には外国人の入居者が半数以上に迫っているところもあります。
もちろん日本人の高齢者と若い外国人が一緒に暮らすわけですから、対立や軋轢も生じます。たとえば、ごみのトラブルです。外国人集住地域で最初に持ち上がるのは、たいていの場合ごみ問題です。
しかし、
ごみのトラブルは地域のルールに不慣れなために起きることであり、経験を積んでいけば解決します。実際、私は外国人が多く居住する川口市の芝園団地や豊田市の保見団地などを取材しましたが、現在ではごみ問題はほとんど起こっていません。
そもそも
ごみの出し方に問題があるのは日本人だって一緒です。外国人が多く住む広島市の基町団地で長年清掃員をしている方に話を聞いたところ、「日本人のごみの出し方だってひどいよ」と言われました。私たち自身、日本人によるごみや煙草のポイ捨てなどを何度も目にしたことがあるはずです。
もとより、団地ではトラブルばかり起こっているわけではありません。
日本人住民と外国人住民の間に割って入り、互いに手を結ばせようとする動きも見られます。たとえば、芝園団地では外国人家庭のために学習・進路相談を行ったり、外国人住民を講師とした外国語講座を開催するなど、様々な交流の場が設けられています。
こうした交流の中心にいるのは、
大学生をはじめとする若者たちです。彼らは嫌味なく両者の架け橋になることができています。よく最近の若い人はだめだと言われることがありますが、若い人たちはむしろ、日本は今後外国人と共生していかなければならないという時代状況を的確に見てとっていると思います。彼らの行動力を見ていると、すごく心強い思いがします。
若い外国人と日本人の高齢者が協力できれば、地域にとっても大きな力になるはずです。日本にくる外国人たちは働き盛りで、ものすごいエネルギーを持っています。そもそもエネルギーがなければ外国まで働きにこようとは思いません。彼らの力に日本人の高齢者たちの知恵や経験が加われば、怖いものなしでしょう。