キューバの夜の光景。「立ちんぼ」の数も減ってきているという
’14年にキューバを訪れ、世界中の風俗情報を発信するブログ「
WORLD SEX TRIP」を運営するJOJO氏もこの国に魅了された一人だ。JOJO氏はキューバのナイトライフ事情をこう説明する。
「キューバ滞在は10日間くらいでしたが、その間に100人以上の女性に声をかけられましたね。一般的に中南米の国というのは、ぽっちゃりした女性が多く、治安の面でも安心して夜遊びできる環境があるとは言い難いですが、キューバは別。夜でも街を歩けるほど治安が良い。女性たちは商売という雰囲気ではなく、自分たちも楽しむという雰囲気です。私がこれまで訪れた国でも、夜遊びに関しては間違いなくトップクラスに入る国でしたね」
そんなキューバの夜遊び事情だが、先述した経済自由化により状況は変わってきている。外貨獲得のためにキューバ政府が着手したのは、観光業への注力だった。旅行者の治安維持のために、夜になれば数百メートル単位で警察官が睨みを利かせている。この“監視”により、街中に溢れていた売春を目的とした女性たちは一掃されたというのだ。
実際に筆者がキューバに滞在中も、それらしき女性の姿はほぼ見かけず、声をかけられたのも人通りが少ない路地裏でわずか一人のみだった。
もっとも、ナイトクラブやディスコ、バーにいけばそういった女性達の姿は見かけることはある。だが、ここでも彼女たちと“お遊び”するのはハードルが高いという。ハバナ市内で女性達が集まるバーを経営する男性はこう話す。
100mごとに警官が立っており、徒歩では移動できない
「街中にいた女性達は、裏に潜っているんだ。それはこういったバーであったり、クラブだったりする。それでも観光客にとってはお店を見つけるのは簡単でないし、徒歩で移動なんてしようものならすぐに警察に呼び止められるよ。それに捕まった時のリスクが大きすぎる。数年前までは、週末になると数十人の女性が集まり、それを目的とした観光客で溢れていた。ただ、今はほとんど商売にならないね。アメリカとの国交が回復した15年から変化が生まれ、トランプ政権になってから、こういった流れはより強くなったようにも感じているよ。そういう事情もあり、ここ数年で売春を目的とした女性達の数は激減したよ。もっとも、一度お金を得た彼女たちはなかなかこの道を抜けられないんだが……」
お店にいた女性に話を聞いてみると、切実な声が聞こえてきた。
「キューバでは贅沢をしなければ、誰しもある程度の生活ができるわ。ただインターネットをしたり、(筆者注※キューバではインターネットが制限されており、1時間に100円程度と給与水準に対して高額)、欲しいものを買ったりとする経済的な余裕はない。他の国ではできる当たり前の生活が、キューバでは難しかったりするのよ。ただ、私達は今よりほんの少しだけ贅沢がしたいだけなの。地方からハバナに出てきているような学生達の中にもこういった女性が多い。ただ、今は私達が街を歩いているだけで警察から呼び止められるのよ。おそらく近い将来、キューバでは売春ができなくなる日が来ると思うわ。それほど管理が徹底されている。それは国にとっては良いことかもしれないけど、旅行者や私達にとってみては本当に良いことなのかしら」
キューバ革命以降、他の社会主義国とも異なる独自の文化を育んできたキューバにとって、大きな変化の時を迎えている。他国が直面してきたような競争原理の渦が押し寄せており、その影響は多岐に渡り、ナイトライフもその一つに当たるのだろう。
経済自由化の流れにより、キューバから売春がなくなる日はそう遠くない未来なのかもしれない。
<取材・文/栗田シメイ>