ギャンブル依存症における「自己申告・家族申告プログラム」は本当に依存症の抑止力になるか

パチンコ依存症

イラスト/いらすとや

 4月19日、ギャンブル等依存症対策推進基本計画(以下、基本計画)が閣議決定された。  公営ギャンブルやパチンコにおける依存症対策は今後、この基本計画に沿った形で都道府県の対策計画が作られ、具体的な内容をもって推進されていく。この度閣議決定された基本計画において、パチンコ関連の対策は、5つの分野(広告、アクセス、設備、相談、体制整備)14項目の内容が込められている。  その中でも、ニュース等で注目されているのは、「家族からの申告によるパチンコ店への入店制限」という文言だ。  この問題に詳しくない人は、あたかも今回の基本計画で新たに実施される対策かのように思いがちであるし、報道もそのように書いているが、パチンコ店においては、既に2016年から「自己申告プログラム」を、2017年からは「家族申告プログラム」を実施中である。  本稿では、そのプログラムが実際にどのようなものなのかを確認し、その実効性と課題について検証したい。

遊戯者自身が制限したい場合の「自己申告プログラム」

 現在、パチンコ店が実施している二つのプログラムの概要について。  まずは「自己申告プログラム」から。このプログラムは、パチンコ遊技者本人が、自身で遊技を制限したい場合に利用する事が出来るプログラムである。  具体的には、遊技者が使用金額、遊技回数、遊技時間の3つの項目を任意に選択(複数選択可)し、指定した数量に達した場合、店舗スタッフが遊技の中止を促すというもの。  下の写真がその申込書(2枚)になる。  申込書には本人の顔写真の添付が必要となっているが、この写真は、店舗スタッフが撮影してくれる。  このプログラムの有効期限は申込日から1年間で、本人の申告による延長や解除も可能になっている。また、別様式の申込書を利用すれば、自己申告による「入店制限」の申告も可能だ。

家族の申告で遊戯者の入店を制限できる「家族申告プログラム」

 次に「家族申告プログラム」は、遊技者本人ではなく、その家族の申告により、遊技者本人の入店を制限することが出来るというもの。このプログラムの解除は、申告者しかできず、遊技者が自ら解除する事は出来ない。  下の写真が「家族申告プログラム」の申込書だ。  現在、この「家族申告プログラム」の効力を発生させるためには、遊技者本人の同意も必要となる。今回のギャンブル等依存症対策推進基本計画では、この「(遊技者)本人の同意のない家族申告プログラム」の実施について言及されているのだ。  ちなみに、紹介した2つのプログラムの申込用紙は、プログラムを実施しているパチンコ店内で誰でも手に取る事が出来る。
次のページ 
当面の問題点は三つある
1
2