日本のモーターショーと言えば各自動車メーカーが新作を紹介したり、コンセプトカーを発表し最新技術をアピールする面が強いだろう。しかし、タイのモーターショーも技術公開や新車発表があるにはあるが、そもそもタイは日本や欧米のメーカーの生産拠点であり、開発はほとんど行っていない。また、日本よりも販売する車種も少なく、タイの車マニアを満足させる展示もできない。
そのため、タイのモーターショーは技術面より
新車の商談会場としての側面が強い。どのメーカーも新車を並べる横に商談用のテーブルを並べる。メーカーによっては展示場よりも商談スペースの方が広いのではないかというところもあるほどだ。
ショーで飾られた車の窓に割引率などが記載されていた。(2013年撮影)
タイのモーターショーも日本同様にキャンペーンガールが表に立つ。タイのカメラ小僧たちもこぞって撮影に来る姿は日本と変わらない。また、やはりメーカーがかける費用も違うため、こういったタレント業の女性たちにとってもモーターショーに立てるということはキャンペーンガールとして最高峰の位置にいると言える。
キャンギャルたちにとってもモーターショーは晴れ舞台
しかし、メーカーがさらに力を入れているのは営業スタッフだ。タイ全土から優秀な営業マンが呼び寄せられ、開催期間に集中して売り込みを行う。特にモーターショーで契約が成立すれば、買う側にしても市中で普通に買うよりもローンの金利や保険が安くなるなどのメリットがある。安く新車を買いたい人はモーターショーの開催を待つ。タイでは年に数回、モーターショーがある。「バンコク・インターナショナル・モーターショー」、「モーター・エキスポ」、「バンコク・インターナショナル・オートサロン」などがあり、購入チャンスも多い。
会場に立つ白いワイシャツの人たちは営業マン。(2013年撮影)
2019年3月27日~4月7日には「
第40回バンコク・インターナショナル・モーターショー」が開催された。
楽天家の多いタイ人も、このところ「タイは不況だ」と言い始め、それに合わせてバンコクなどは治安悪化が問題になっている。その状況もあってか、この開催は前年から2万人減の160万人の来場者数となった。ピークはアジア通貨危機前年の1996年、第17回の2,087,539人。その後150万~180万人の間で推移し、近年では第33回(2012年開催)のおよそ196万人が訪れたのが最高記録だ。
これは昔のF1で、アジア人初のF1ドライバーはタイの王子だった
それでもこの第40回開催は主催者発表によると受注台数が自動車で前年比3%増の37,769台となった。メーカー別では1位が「トヨタ」、2位に「マツダ」、3位「ホンダ」、4位に「ミツビシ」、そして5位が「イスズ」と日本勢が強かった。
実際、モーターショーは華やかでちょっとした祭り気分も味わえる。しかも、車もお得に購入できるとあれば、確かにここで買おうという気持ちになることもわかる。ちなみに、規模の大きなモーターショーのうちこの先開催されるのは36回目になる「
タイランド・インターナショナル・モーター・エキスポ2019」で、2019年11月29日~12月10日、バンコク北郊にあるコンベンションセンター「インパクト・ムアントンターニー」が会場になる。タイは外国人でも、労働許可証があればローンを組めるので、我々日本人も土地の購入などよりは気軽に手が出せる。
<取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:
@NatureNENEAM)>
たかだたねおみ●タイ在住のライター。近著『
バンコクアソビ』(イースト・プレス)