ところでチューイングガムは、ゴルフだけでなく他の米スポーツ界でも古くから馴染みがある。プロバスケットボールNBAで神と崇められたマイケル・ジョーダンもプレー中にガムを噛んでいたし、野球のMLBでは試合中のベンチに必ずチューイングガムが置いてあるため、米国ではガムといえば野球のイメージが強いかもしれない。
MLBを取材することの多い筆者は試合前の練習中、バケツ型容器に入れてベンチに置かれているガムを味見することが度々あるのだが、どこの球場もフレーバーは甘いフルーツ系でミント味はなし。ヤンキースタジアムのガムバケツにはフルーツ系が5種類ほど入っているが、やはりミントはない。球場ではかつて、選手がガムを噛んではそこら中に吐き出すため、試合前に取材でグラウンドを歩いていると必ずといっていいほど靴に噛んだ後のガムがこびり付き閉口したものだった。
それがあるときから、MLB全体でガムを吐き出すことを禁止するようになり、今は以前ほどガムを噛む選手は多くないかもしれない。そこで日本の菓子メーカーである森永製菓が、吐き出さずに食べられるチューイング菓子ということでハイチュウをMLBにアピールして普及させ、選手のクラブハウスにハイチュウを常備している球場も増えた。いまだにどの球場でも試合中にはガムバケツが置かれているが、それは伝統の継承のような趣が強いのかもしれず、ガム自体がクローズアップされることはない。
そう考えると、ウッズによって噛む理由や効果にこれほど注目が集まったことは、ガムにとってはエポックメーキングな出来事だったのではないだろうか。
<取材・文/水次祥子 Twitter ID:
@mizutsugi >
みずつぎしょうこ●ニューヨーク大学でジャーナリズムを学び、現在もニューヨークを拠点に取材執筆活動を行う。主な著書に『
格下婚のススメ』(CCCメディアハウス)、『
シンデレラは40歳。~アラフォー世代の結婚の選択~』(扶桑社文庫)、『
野茂、イチローはメジャーで何を見たか』(アドレナライズ)など。(「
水次祥子official site」)