「待機児童ゼロ」は「問題ゼロ」ではない。江戸川区の保護者団体が訴えたいこと

おやつは1週間分を保護者が持参

 学童保育の環境にも課題が残る。学童保育の正式名称は、「放課後児童健全育成事業」と言い、共働きやひとり親世帯の子どもが放課後に安全に過ごせる場を提供することを目的としている。  児童福祉法は、ひとつの施設あたりの定員を40人ほどと定めている。しかし、江戸川区の「すくすくスクール」は、2015年3月から児童福祉法から外れ、区独自の事業に転換。これにより定員の制限がなくなり、学童保育希望者は誰でも入れるようになった。江戸川区の学童保育待機児童がゼロの理由だ。  全入化は待機児童解消につながるが、すくすくスクールに遊びに来る子どもたちと、学童保育を利用する子どもたちが一緒に過ごすため、人数が増える。多い場合は2クラスに150人の子どもが入り、机と椅子がなく床で勉強する児童がいるケースもある。 「利用する児童数に対して指導員の数が足りず、子どもたちの様子に目が行き届かないことがあります。ある子は、学童帰りに熱中症になり倒れてしまいました。 指導員を増やして欲しいと区に訴えたことがありましたが、人員確保の困難を理由に却下されました。現状では、ほぼすべての職員が非常勤かボランティアです。学童にももっと予算をとり、子育て支援を充実させて欲しいです」  また、補食(おやつ)の提供はなく、希望者は一週間分のおやつを曜日ごとにパッキングして、保護者が学校に持参する決まりだ。学童登録をしない子どもたちが帰る午後5時を過ぎないと食べられないため、おやつを欲しがらない子どもも多い。区は過去にはおやつを出していたが、財源削減を理由に廃止している。島さんは、「おやつ提供の再開についても要望したい」としている。

「待機児童ゼロ」は「問題ゼロ」ではない

 えどみらこは、待機児童問題や江戸川区の学童問題に関心を持つ保護者が集まって2018年に結成。6人のメンバーがおり、江戸川区議会議員への面会や、同区学童関連のファクト調査などを行ってきた。  署名活動はネットサイトchange.orgだけでなく、紙でも行い2000人の署名を目標としている。「ネットサイトはSNSでの拡散がしやすく、広い層まで届けられる」とAさんは効果を期待する。  今回の署名活動で社会に知って欲しいこととしてAさんは、「学童の待機児童ゼロ=問題ゼロではないこと」を強調する。 「学童の預かり時間が短いために仕事との両立ができず、退職を余儀なくされた人もいます。大人数での保育、おやつが食べられない環境から、子どもが『すくすくに行きたくない』と訴えるケースもあります。その場合は、お金をかけて民営の学童に通わせる保護者もいます(※)」 (※)学童保育には運営主体が自治体の「公立」と、民間の「民営」がある。民営は公立に比べ預かり時間に融通がきくなどのメリットがあるが、利用料は高くなる。利用料は、江戸川区の「すくすくスクール学童クラブ登録」は月に4000円だが、民営だと数万円に及ぶ。  島さんは、江戸川区での理想の子育て環境を次のように話した。 「私は生粋の江戸川区民ではありませんが、第一子誕生後からずっと住んでいて愛着を持っています。だからこそ、衰退していく姿を見たくありません。でも今のまま何も変わらないと、私たちの子どもが大人になった時にも、同じ問題が横たわったままです。 改善が必要なことをはっきりと主張して区に話を聞いてもらい、江戸川区をより住みやすいまちにしたいです」  えどみらこは、4月21日投開票の江戸川区議会議員選挙の候補者に、子育て政策を質問する「#子育て政策聞いてみた」を実施。議員に学童がおかれる現状を伝え、引き続き改善を訴えていく。 <取材・文/薗部雄一> 1歳の男の子を持つパパライター。妻の産後うつをきっかけに働き方を見直し、子育てや働き方をテーマにした記事を多数書いている。
1歳の男の子を持つパパライター。妻の産後うつをきっかけに働き方を見直し、子育てや働き方をテーマにした記事を多数書いている。
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