ところが近年は、全国の9か所で「引き取る」市民運動が現れ、マスコミもことあるごとにその動きを報じている。今年3月17日には、『毎日新聞』が「基地引き取り」について電話による世論調査を行った。
世論調査の結果は、
・辺野古沿岸部の埋め立てについて、工事の続行に「反対」が52%で、「賛成」の29%を上回った。
・沖縄の米軍基地が「あなたの住む地域に移設されるとしたら」との質問には、「反対」が62%で、「賛成」の21%を大きく上回った。
というものだった。
谷津さんはその数字よりも「かつて全国紙の世論調査の項目に『引き取り』が上がることはなかった」ので、その世論調査(をすること)自体に驚いた」という。知事会にもマスコミにも、少しずつだが「引き取り」を軽視しない姿勢が育っている。
「沖縄の声を聞け」という常套句ではなく、次のステージへ
「引き取り」運動の火付け役の一人でもある高橋哲哉・東京大学大学院教授(左)は、普天間飛行場を引き取ろうとの目的もあるが、「(その4倍の面積の)嘉手納飛行場まで睨まねばならない」と訴えた
だが「引き取り」云々は別にしても、世間的にはまだまだ沖縄で起こっていることは「ヒトゴト」だ。
たとえば、2015年7月の共同通信の戦後70年世論調査によると、日米安保の支持率は9割近くあった。ところが、前出の『毎日新聞』の世論調査では、辺野古埋め立てに「反対」と答えた層で、自分の地域への米軍移設にも「反対」と答えた人が84%いた。
米軍犯罪や騒音問題などの問題がある以上、引き取りは簡単に決められることではない。だが、今のままでは「本土」の意識は「沖縄はたいへんだ。頑張って。でも、基地は置いておいて」という現状から一歩も出ることはない。米須さんはこの感覚を「差別」だと捉えている。
谷津記者は以下のように話す。
「『朝日新聞』でも、もう20年以上も『沖縄の心に寄り添え』とか『沖縄の声を聞け』と訴えてきましたが、たとえば今『朝日デジタル』で『辺野古』という言葉を見出しに入れただけで、ページ閲覧数は下がります。もう『沖縄の声を聞け』という常套句ではなく、次のステージ゙となる問題提起を考えなくてはなりません」
その後、質疑応答などがあったが、集会の最後に米須さんがこう締めくくったのが印象的だった。
「私たちの世代で、琉球併合から始まった(本土による)差別を終わらせます」
<取材・文・撮影/樫田秀樹>