夢を見ることすら厳しい韓国の就活事情。しかし、厚い壁を破る若き成功者も
2019.04.16
日本の労働市場が人手不足に悩まされる一方、韓国では若者の失業率の上昇が問題となっている。’17年には青年失業率(15~29歳)が過去最悪の12.3%を記録し、その後も劇的な改善は見せていない。’97年のアジア通貨危機以降、韓国では少なくとも’00年からこの状態が続いており、解決に至っていない。
韓国の激しい就活戦争を乗り切った勝者たちにも、彼らなりの悩みがあるようだ。日本の芸能界に興味があったというチェ・スミンさん(仮名・45歳)は偏差値中位の日本の国立大学を卒業後、韓国で就職活動をしたが軒並み失敗。
「東大ならまだ違っていただろうけど、当時は日本の大学は学歴として扱われませんでした」
そうして1年が経過後、日本語人材を求めていたベンチャーに拾われ就職。その後、韓国の超有名芸能事務所の日本支社に転職。年収は800万円まで上がった。順風満帆なキャリアは「韓流のおかげ」だといい、日韓の職業意識の違いをこう分析する。
「日本人は、どんな仕事でもある程度満足するが、韓国人はヘタに学歴を積んだプライドがあるからか、常に上を目指そうとする。僕にも少なからずそういう面はあると思います」
現在は知人に誘われ韓国で働いているが最盛期ほどの収入ではなく、仕方ないと思う半面、もっと上を目指したい気持ちがくすぶっているという。
そして日本でも有名な某大企業で勤続5年目となるオ・テグさん(仮名・35歳)。英語、韓国語、スペイン語と中国語の4か国語ができ、IT関連の各種資格を持つハイスペック人材だ。日本でいうMARCHにあたる大学を2年休学し、海外を放浪。帰国後、半年ほどかけて就活を行った。エントリーした50社中、最終面接にたどり着いたのは5社で、そのうち大企業数社から内定を獲得。その他大勢に比べるとはるかに恵まれているように見える彼にも、悩みはあるという。
「業界も社風も保守的で、めったにイノベーションがないので業務が単調。内定していた他の会社にすればよかったと悔やまれます。かといって辞めても僕の年ではもう他業種への転職は厳しい」
最近生まれたばかりだという子供に、就職競争をさせたいか?という問いには「できればさせたくない」と首を横に振った。
地方都市出身で現在、ソウル市の公務員であるカン・ジョンナムさん(仮名・39歳)の幼い頃からの夢は、シェフになることだった。そのため日本では法政大学レベルのK大学で調理学を、同大学院では食品学を修めた。その後、そこそこの企業に就職し退社。いよいよシェフに……とはならなかった。
就活エリートたちの憂鬱 働けるだけマシか、それとも
充分なスキルを身に着けても実現できない夢
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