正式な認可を得て民泊経営をしていることを話すと、思わぬ展開に
続いて理事選任の時間に入った。六人の班長が会長・副会長・会計・総務などどれか一つを引き受けることになる。会長・会計・総務は何となくやることが想像がつくが、副会長というのは何をやるのか。
聞いてみると、「二か月に一回くらい、金曜夜にほかの自治会とも協力してパトロール活動で4㎞ほど歩く」のだという。フルマラソン3時間18分、ほぼ毎日10㎞前後走っている筆者にはおあつらえ向きではないか。迷うことなく立候補した。
若手としては仕事があるので平日は動くことができない。高齢者はあまり足を動かすのはイヤだ。また平日は会社勤め、週末は少年野球の指導があるので週末は動けないおじさんもいる。副会長希望者が三人いるが、要は誰も会長だけはやりたくないということだ。
そこで筆者は持参していた自著・訳書の計三冊と千葉県知事から出されている民泊ライセンスを参加者全員に見せた。
「私、こういう本を出してまあまあ売れていて、それと並行して正式な認可を得て家で宿泊施設もしております」
すると、明らかに参加者の筆者に対する態度が変わった。今までは何の仕事をしているかわからない「胡散臭い人」だったが、本も出していて知事のお墨付きももらっている「先生」ということになった。「私も民泊、興味あるんですよね」というおじさんも現れた。
そこで筆者は語りかけた。
地元に貢献して説明責任を果たせば、民泊は受け入れられる
「私は東京の会社に通うサラリーマンではなく、原稿も自宅兼事務所で書いていますし、民泊ゲストへの応対もあり、家にいることが多いんですよ。ですから、地域活動にもできるだけ協力したいとは思っているんですよ」
すると、現会長から衝撃の一言が発せられた。
「皆様のご希望を勘案しますと、ここは大丸さんに会長になっていただくのが一番いいのではないかと思います」
筆者は驚愕した。班長と副会長くらいでお茶を濁そうと思っていたら、よりによって会長である。しかし、ここの参加者は筆者が民泊ホストであることを承知の上で会長就任を打診しているわけだ。つまり、今後は地域の全面支持のもと民泊ができるということだ。
「率直に申し上げて、転入してから半年たっておらず、何もわかっておりません。それから、三月の例会は海外出張のため出られません。四月の例会は、午後に法事があるため、十時開始のところを九時にできますか? それでもよろしければ、謹んで会長を引き受けます」
一つ確かなことがある。かつて寄せられた批判コメント「仮に持ち家であっても、地域は反対する」が完全に虚偽であることが証明されたということだ。謝罪はないのだろうか。
全てを公開し、地元に貢献して説明責任を果たせば、民泊は受け入れられるのである。
ということで、私タカ大丸は、本年四月より、おそらく日本初の民泊ホストとして町内自治会長に就任することになった。
【タカ大丸】
ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『
ジョコビッチの生まれ変わる食事』は15万部を突破し、現在新装版が発売。最新の訳書に「
ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。10月に初の単著『
貧困脱出マニュアル』(飛鳥新社)を上梓。 雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。
ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『
ジョコビッチの生まれ変わる食事』は15万部を突破し、現在新装版が発売。最新の訳書に「
ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。10月に初の単著『
貧困脱出マニュアル』(飛鳥新社)を上梓。 雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。