世田谷区議・藤井まな「我、いかにして民泊支持派になりしか」~金欠フリーライター、民泊をはじめる(12)~

世田谷区議会議員・藤井まな(公式HP)より

 藤井まな(敬称略)は1980年生まれで立憲民主党所属の世田谷区議会議員である。民泊の実態を知るまでは「何となく気持ち悪いから反対」だったが、実態を知り推進派の急先鋒となった。  かつて、内村鑑三が「余はいかにして基督教徒になりし乎」という書物を著したが、今回は、ごく一般的な地方議員がどのように民泊を理解するようになったのか、「彼いかにして民泊推進派になりし乎」を送ることとしたい。

藤井区議が反対派だった理由

「民泊に反対していたのは、単純に民泊に対する理解がなかったからです。僕の頭の中で当初あった民泊のイメージというのは、“ある程度お金を持っている人がいて、普段住んでいるのとは別の場所、投資対象の部屋なんかを貸しに出して、カギはボックスに入れているのを暗証番号で取り出して、コミュニティに対する何の説明もないまま外国人が泊まりにきて、そのまま去っていく”みたいな感じでした。それだと地域の安全が担保できないよな、というのが区議会議員としての一番の懸念でした」  政治家としては当然の懸念だろう。 「当然、議員としての最優先事項は住民の生命と財産を保護することなわけで、そう考えたときに見知らぬ外国人が出入りするという民泊というのは―新宿とか、渋谷とか、繁華街の観光地ならまだしも―住宅地が多い世田谷区にはそぐわないし、正体不明の外国人によって生活が乱される、ということは普段の生活を財産ととらえると財産が脅かされる可能性があることになる、という考えでした。ゴミが出しっぱなしになる、とか」  この「何となしの不安感」は民泊について耳に入り始めたころから昨年実際に民泊ホストと知り合うまでずっと続いていたという。

世田谷区で、宿泊施設が足りなくなるのは明らかだった

「民泊そのものを完全否定することはできない、とは思っていました。2020年のオリンピック・パラリンピックがあるのはもちろんですが、世田谷区でも(馬事公苑で)馬術競技などが開催されますからね。そのときに世田谷区の宿泊施設は足りるのか。僕が調べてみると世田谷区の宿泊室数がたしか1152室とかなんですよ。この施設は普通のホテルだけでなく、ラブホテルなんかも全部宿泊できる場所を含めても、という数字なんですよ。だから施設が足りないのは明らかですよね。ということで私が当初提案していたのは“商業地域に限って民泊OKとしてはどうか”という案でした」 「商業地域」としておけば、地域内に住んでいる人も元々商業が目的で集まっているのだから宿泊施設・民泊も受け入れやすいのではないか、というのが藤井の考えだった。  世田谷区でいうと、駅前には大なり小なり「商業地域」はある。ただ、言うまでもないがこの規制だと住宅地域にあるホスト在宅型はダメということになってしまい、現実に合わない。本連載で一貫して繰り返すように、問題が起きているのは全て不在型であり、在宅型においては一切問題が発生していないのだ。 「それで次に出てきたのは“第一種低層住宅地域を除く”でした。こうすると、商業地域よりは幅が広がりますよね。そういう議論をしているときに先輩からの紹介で知り合ったのが在宅ホストの皆さんでした」
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ホスト在宅型の民泊であれば何の問題もないことに気づいた
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