韓国、高学歴貧困の現状。「幼い頃の夢を叶える人なんていない」

高学歴ゆえのプライド、親世代からの圧力

 起業も推奨されず、副業も日本ほど浸透していないため、貧困を打破する手段が限定的な韓国。韓国の若年層の失業問題に詳しい、梨花女子大学経済学部のホン・ギソク教授は次のように話す。 「韓国の青年失業問題はあらゆる要素が絡み合い、原因を特定するのが困難です。人口的要因と景気変動的要因から述べるならば、韓国でベビーブームが起きた’91~’96年生まれの世代が成人し、雇用市場を圧迫していることが挙げられます。さらに、労働市場の両極化と、高学歴者のインフレが起きている点も考慮しなければなりません。特に韓国は大企業とその他の中小企業の賃金格差が非常に大きく、そのうえ大企業の数が全体の1%しかないため、当然ながら大量にあぶれる人が出てきます。また、似たようなスペックばかりのため区別がつかない。それで政府からは、経歴を開示せずに選考する案が出ましたが、そうなるとさらに混乱が生じるでしょう」  また、ホン氏はこうも指摘する。 「多くの韓国の若者は、大卒者であることの自負があります。韓国の貧しい時代を生きた親世代が、そう仕向けたからです。特にソウルの大学出身者はプライドが高く『自分にはもっとふさわしい仕事があるはずだ』と仕事をえり好みする傾向があるかもしれません」

生活のために夢を諦める人も

 青年労働問題に取り組む市民団体「参与連帯」労組委員長イ・ジョウン氏は「変わる余地はある」と話す。 「韓国の労働市場の問題の一つが、ミスマッチです。就職に時間がかかるので、食いつなぐため望まぬ仕事や苦しいアルバイトをする。生活のために夢を諦める人も多いです。そこで政府の経済社会労働委員会で、就職活動中の学生が就業するまで1か月50万ウォン(約4万9500円)を最大半年間支給する案が決定されました。また文政権発足後、最低賃金が30%上昇。それにより、アルバイトだけで生計を立てるのも不可能ではなくなりました。Uber宅配などの特殊雇用者(※業務委託と同意)も活性化されてくるでしょう。大企業に就職できなければ終わりといった硬直化した視点を脱し、働き方に多様性が出ると思います」  韓国の高学歴貧困は、ほとんどの国民が該当するというパンチの効いた結果となった。デモで政権を転覆させるパワーがあるだけに、ぜひ起死回生を成し遂げてほしい。 <取材・文・撮影/和場まさみ 小野田衛 安宿緑 安英玉> ― 超絶格差社会 高学歴貧困in韓国 ―
1
2