今回、八幡浜市におけるPA事業に直接参加して痛感しましたが、
立地点住民の最大の関心事項について多くを賛成反対ともに論者は正面から答えていません。これはかなり深刻なことです。
賛成、反対ともに議論が仲間内での定型化してしまっており、地元市民のなかで大多数を占める中間派の市民について視野に入っていないと考えられます。
とくに奈良林博士の講演は、極めて巨視的な視点に留まっており、そこに
地元市民の視点は全くありませんでした。これは過去の原子力PAが、どのようなものであったかを如実に示しています。
温暖化やエネルギー危機を持ち出されたところで、
地元市民にとっては、自分たちがそのグローバルな視点での「正義」の贄(にえ)になる理由が全く分かりません。よそでやってくれ、やるなら十分なお金をよこせというのが正直言ったところでしょう。そこへの答えはありません。
このことは地元自治体、政界にもいえて、市民への説明をまともに行っていないというのが私の率直な感想です。これでは、説明会を行った、見学会を行ったという既成事実化のみの典型的なヒノマルゲンパツPA*となってしまいます。
(*:PA(Public Acceptanceパブリックアクセプタンス 社会的受容 原子力発電所、ダム、高速道路や、新ワクチンなどその事業が社会(多くは地域社会)に大きな影響を与える場合、事前に社会的合意を得ること。民主社会において重要な手続きである。
しかし日本においては、PAと称して、
詭弁、ごまかし、嘘、便宜供与、恫喝など、「嘘と札束と棍棒」によって市民を分断し、服従させる手法がまかり通っている。これは本来のPAを換骨奪胎した日本独自の異常なものである。筆者はこれらを(親方)ヒノマル◎◎PAとして本来のPAと区別している)
日本が近代国家になって以降、地方自治と民主的手続きを徹底的に軽視し、形骸化支えてきたその宿痾がここにあると思います。これでは必ず行き詰まります。PAに王道はありませんが、邪道はいくらでもあります。そして邪道は必ず行き詰まります。
原子力PAシリーズは、今回で一応の締めとします。肱川大水害シリーズと同様に今後も取材を続けますので、後々続編として再開する予定です。
『コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」』第4シリーズPA編−−6
<取材・文・撮影/牧田寛 Twitter ID:
@BB45_Colorado photo by
Nuclear Regulatory Commission via flickr (CC BY 2.0)>
まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題についての
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まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについての
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