中朝国境の街、丹東で観光名物鴨緑江のモーターボートが禁止に。いったいなぜ?
北朝鮮問題で常に注目される中朝国境の丹東で観光名物になっていた高速モーターボートが全面禁止されていたことが分かった。
2月末、決裂したハノイでの米朝首脳会談の際にも金正恩党委員長が国際列車で丹東を往復とも通過するなど丹東は、北朝鮮にとって重要拠点であり、国連制裁を受ける前、最盛期の中朝貿易全体の7割がこの丹東を経由して中国へ輸出されてきた。
中朝国境の鴨緑江を遊覧する20、30人規模から50人以上乗れるような大小遊覧船もあるものの遊覧船は鴨緑江の中間くらいまでしか航行しない。一方、モーターボートは、対岸の北朝鮮人の話し声が聞こえるくらいまで接近していた。そのため、モーターボートは、遊覧船のチケットの3倍ほどするにもかかわらず観光客には人気が高かった。
そのため、中朝国境橋と並ぶ朝鮮戦争で米軍の空爆により破壊された断橋の近くには、複数のモーターボート運営業者が乗り場を構えお客を奪い合ってきた。
そのモーターボートが丹東観光の中心地で、金党委員長が通過した中朝国境橋付近で昨年4月に禁止されたのだ。
ちょうど、金正恩党委員長が外交デビューで習近平国家主席と北京でトップ会談を行った直後だった。
昨年4月にまずこの断橋付近のモーターボート乗り場が一斉に営業停止となり、それから郊外へ停止範囲が広がっていった。丹東市内から北東へ20kmほどにある虎山長城近くのモーターボート場、さらに30kmほど北上したもう1つの断橋と呼ばれる河口断橋周辺のモーターボート乗り場も8月までは姿を消して、現在、丹東付近のモーターボート乗り場は全滅している。
しかし、この件は外国メディアでは報じられていない。中国当局がモーターボートを禁止した理由を公にしたくないことや丹東の各旅行会社がまったく影響を受けてないことも関係していそうだ。
「元々モーターボート営業は無許可で勝手にやっていたものでした。そのため、旅遊局(観光局相当)から私たち旅行会社へモーターボート観光をコースに入れないように再三通達が出ており、正規の旅行会社であればモーターボートを観光コースに入れていたところはなく、コースには遊覧船観光のみを組み込んできました」(丹東の旅行会社関係者)
複数の闇業者が営業許可なく20年以上も当たり前のようにボートを走らせ続けてきたのがなんとも中国らしいと言えるが、正規に営業許可を受けている遊覧船は、今までと変わらず運行されている。
中国は旅行ガイドのライセンスがあれば、各観光地の入場料がフリーパスになる。ガイドは遊覧船もチケットなしで乗れるが、お客がモーターボートに乗りたいと希望した場合は、ガイドは乗り場で待っていた。ガイド特権が使えないからだ。モーターボート観光を楽しんだ多くの日本人はこのボートが闇営業だったと知っていた人は皆無だろう。それほど、丹東の風物詩として馴染んでいたからだ。
北朝鮮側川岸まで接近するので人気だったモーターボート
海外メディアはまったく沈黙。その背景には……
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