昨年、4月、旅遊局が旅行会社関係者を集めてモーターボート禁止を通達。禁止理由は、「密貿易防止」のためと明言したという。
丹東を代表する観光スポット虎山長城。しかし、実は、ここよりも観光客で賑わっていたのがその少し先にあるモーターボート場だった。ここは3社の業者が並ぶように営業していた。ここの人気の秘訣は、「接岸」にあった。
ときには北朝鮮領土の中洲へ接岸することもあった
お客を乗せた状態で対岸の北朝鮮へ接岸するのだ。初めて体験すると呆気にとられてしまう光景だ。船頭は、見下ろす軍人ともツーカーの仲で、奥からズタ袋を引きずって北朝鮮人男性がボートへドサドサと荷物を放り込む。このときの中身はロシア製のタバコ(もちろん偽物)だった。
この密貿易体験が人気の秘密だったのだ。
当然これだけでは、貿易と言えるほどの物量はなく、あくまで客向けのパフォーマンスだったのだろう。
本物の密貿易もあるので観光時には巻き込まれないように注意
「今でも特に夜間はボートを使った密貿易が盛んに行われています。郊外は真っ暗なので見つかりづらいようです。トラブルに巻き込まれないようにお客さんには夜間、郊外の鴨緑江へは近づかないように注意しています」(同)
中国は北朝鮮と違い個人で自由に移動できるので夜間タクシーを飛ばせば、密貿易現場へ行くこともできてしまうので、不用意に近づいて土左衛門とならないように注意したい。
国連制裁に従い正規の中朝貿易は大幅に減ったと制裁履行をアピールする中国だが、いまだに観光客から積み荷に変えたモーターボートを使った密貿易が行われている現状が浮かび上がってくる。
<取材・文・写真/中野鷹(Twitter ID:
@you_nakano2017>
なかのよう●北朝鮮ライター・ジャーナリスト。中朝国境、貿易、北朝鮮旅行、北朝鮮の外国人向けイベントについての情報を発信。東南アジアにおける北朝鮮の動きもウォッチ。北レス訪問が趣味。 Twitter ID
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