大卒でも財閥系大企業でなければ年収200万円台。韓国の高学歴貧困の厳しすぎる事情

努力すれば人生挽回できるなんて韓国ではありえない

カリスマ就職予備校講師の看板。合格率が気になるところだ

「理由は、できないことをやらせるから。事務と言ったのに、3D映像を作れと言うのはやりすぎでしょう。韓国の中小企業は、募集内容と実態が違うことが多いんです。倉庫の荷下ろしと言っていたのに、倉庫のモノを売ってこいなどは日常茶飯事。あと、採用時に年俸3000万ウォンと言ったのに、後で『新人だから2000万ウォン』と平気で下げてきたり。だから人が集まらないんです」  とはいえ今月で失業保険給付が終わるため、事態は逼迫している。 「自分はソウルに実家があるから助かっていますが、地方から上京している人はもっと厳しい。地方は仕事が少ないから来ざるを得ないのですが、すぐに仕事があるわけでもなく、饅頭を5つ買って1週間しのぐという人もいますよ」  ホンさんが言うように、地方出身の若者は最も悲惨だ。釜山出身のミン・チュナさん(仮名・23歳)は昨年1月に技術系の短大を卒業し、仁川で一人暮らしをしている。TOEIC800点とオラクルの各種資格に加え、フラワーアレンジメントの資格も持つ。家賃は46万ウォン(約4万5000円)。卒業と同時にウエディングプランの会社に就職できたが、朝10時から夜7時まで働いて社員全員の月給が80万ウォン(約7万9000円)というブラックぶりだった。 「友達はホテルに就職して月給220万ウォンもらっているのに……。家賃とスマホ代だけでカツカツ。これならバイトのほうが倍以上稼げると思い、昨年10月に退職したんです」  ところが文在寅政権の方針により、最低時給が’18年の7530ウォン(約742円)から’19年は8350ウォン(約823円)へと大幅に上昇。そのためバイトの競争率が激化し職にありつけず、単発バイトを知人に紹介してもらっていたが、昨年末から現在まで引きこもり状態だという。 「実家からたまに仕送りをもらってますが、今月はもう家賃が払えない。花屋のバイトに何とか受かりましたが、それも週1回だけ。洋服は組み合わせを替えて着まわし、食事はシリアルとヨーグルトを買って毎日少しずつ食べてます」  極貧生活を抜け出すため、日本で働くことを希望している。 「10月から日本にワーホリで行く予定です。日本ではバイトの給料が韓国よりはるかに高いと聞いてます。韓国に未練はありません」

日本に関心があるだけに決断できない事情

 日本に関心を持っていても、くすぶる人もいる。日本のアニメを見て日本語を学びはじめたチョ・チウンさん(仮名・23歳)は、高校の成績はあまり良くなかったが日本語能力という一芸で、韓国トップの外国語大学に推薦入学した。だが、卒業後は何をしたいのかわからなくなり、引きこもるように。韓国では独身者が親元で暮らすのが普通であるため、引け目は感じないがやはり親の目は厳しいという。 「親は『時間の無駄だ』と言います。特に父は公務員なので厳しく、私が遊んでいると思ってるみたい」  ホテルの配膳のアルバイトが時給1万ウォン(約990円)だが、常に仕事があるわけではなく、懐事情はよくない。  日本語がとてもうまいため、日本の現地法人や日本でも就職できるのでは?と問うと、意外にも日本で働く気にはなれないと話す。 「私の日本語はまだまだ。それに、親切な人もいると思うけど、韓国人を敵視する人もいるでしょう。だから、なかなか決断できません」 取材・文・撮影/和場まさみ 小野田衛 安宿緑 安英玉 ― 超絶格差社会 高学歴貧困in韓国 ―
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