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イタリアが中国の一帯一路のプロジェクトに参加することになった。このことについて、欧州連合(EU)そして米国は、中国がこれを契機にヨーロッパを支配するようになるのではないかと警戒感を表明している。
しかし、イタリアにして見れば事情もあるようだ。
例えば、イランとの核問題を発端に米国がロシアに制裁を科し、それに協力してEUもロシアに制裁を科した件だ。イタリアはそれまで積極的にロシアと貿易取引を伸展させていたのだが、この制裁によって、ご破算になってしまったのだ。
また、EUに対する反感も育ちつつある。ユーロの導入によって、イタリアのリラは弱い通貨となり、しかもイタリア政府が輸出奨励金を支給していたことなどがユーロの導入で廃止せざるを得なくなってイタリアはそれまで半世紀以上イタリア経済を支えて来た輸出立国から後退してしまった。現在長期に亘って景気が低迷している事態を前にポピュリズム政府は財政赤字を幾分か増やしても景気回復に政府は公共投資を進めて行きたいと望んでいる。ところが、それに対してもEUは財政緊縮策の適用を連立政権のイタリア政府に要求している。
現状のイタリアは失業率10.5%、国の負債はGDPの132%にまで及んでおり、非常に厳しい経済環境にある。それ故、外国からの投資は是が非でも必要とされているのである。外国からの投資といってもEU加盟国も経済は低迷しており、そこからの投資は期待できない。そのようなことからポピュリズム連立政権の「五つ星運動」が視線を向けたのが中国なのである。
五つ星運動のリーダーで副首相ルイジ・ディマイオ(Luigi Di Maio)の手足となって中国との関係強化に動いたのが経済省次官のミケレ・ジェラシ(Michele Geraci)であった。ジェラシーは中国で生活していたという経験もあり、より中国との関係強化の必要性を感じていたようである。
ジェラシは「イタリアは中国のヨーロッパへの投資相手国の中でしっぽに位置することから脱却せねばならない」と述べ、英国にはこれまで800億ユーロ(10兆4000億円)、スイスには400億ユーロ(5兆2000億円)を投資しておりながら、イタリアには僅か220億ユーロ(2兆8600億円)しか投資していないことを明らかにしたのである。(参照:「
La Vanguardia」)
一方でディマイオは「両国の貿易バランスを均衡にすることから始めることだ」「イタリアには『Made in China』が多すぎる、中国には『Made in Italy』が僅かだ。合意はこの傾向の是正に向けたい」と述べた。(参照:「
El Pais」)