Windows 95 最速インストールRTAから「コードゴルフ」まで。知られざるコンピュータ競技の世界

ゲームじゃなくても「競える」

タイピング  冒頭で言及したeスポーツは、コンピュータ上で動くゲームを使って競い合うものである。そのカテゴリの中に、文字を入力する「タイピング」競技も含まれる。  タイピングについては、eスポーツという言葉が日本で見られる以前から、競技として行われていた。この入力速度を競う対象は、パソコンのキーボードだけではない。携帯電話についても競われている。  その独自性から考えて、タイピングはeスポーツの一ジャンルではあるのだが、別枠の競技として見なしてもよいのではないかと筆者は思っている。 ▼オーバークロック  コンピュータを使った競技の中には、コンピュータをどれだけ高速に動作させられるかというものもある。  オーバークロック自体は、パソコンのCPUなどを通常よりも高い周波数で動かす行為だ。通常とは違う設定で高速に動作させるのだが、単純に周波数を高くすればよいというものではない。  周波数を高くすると、発生する熱でコンピュータが壊れたりする。そのため様々な方法で冷却したりする。時には液体窒素を使って冷却することもある。  オーバークロックの大会も開かれており、『のだめカンタービレ』で知られている二ノ宮知子は、このオーバークロックをテーマとしたマンガ『87CLOCKERS』を書いている。 ▼セキュリティコンテスト  世の中には、セキュリティ技術の競技大会も存在している。セキュリティコンテスト(キャプチャー・ザ・フラッグ)は、コンピュータセキュリティ技術を競うもので、ハッカーコンテストなどと訳されることもある。世界的に有名なのはDEF CONだ。日本でもSECCONという大会が開かれている(SECCON 2018)。  SECCONは多くのIT起業が協賛しており、後援にはサイバーセキュリティ戦略本部、警察庁、総務省、公安調査庁、文部科学省、国土交通省などが名を連ねている。国によっては、同競技に参加しているホワイトハッカーが、サイバー犯罪やサイバーテロ対策の要員としてスカウトされることもある。

プログラミングも腕を競える

競技プログラミング  競技プログラミングは、出題された課題に対して、条件を満たすプログラムを書く競技だ。この条件には、要求された処理を行う以外にも、制限時間内での解答や、一定時間内で計算が終了することなども含まれる。この競技をこなすには、アルゴリズムや数学の知識が要求される。  競技プログラミングはWeb上で開催されるものが多数あり、オンライン上で判定してくれるシステムを持っているものが多い。海外では「Topcoder」が有名で、国内では「AtCoder」が名を知られている。  また、オフラインで参加する国際大会も開かれている。競技プログラミングは、就職・転職活動とも相性がよく、プログラマの能力を測る1つの指針として使われることもある。 ▼コードゴルフ  ショートコーディング、コードパズルとも呼ばれる。特定の処理を、どれだけ短いプログラムで書けるか競うものだ。この競技では、ソースコードの文字数が少ないほど、優れていると評価される。  インターネット上では、様々な処理に対して、各プログラミング言語で最短のプログラムを投稿するサイトが存在している。ただ、その特性上、投稿されたコードは閲覧出来ないことが多い。そのため、投稿者の名前と文字数だけが表示されていて、マニア以外が見ると意味不明のサイトになっている。  筆者も昔、「CodeIQ」というリクルート キャリアが運営していたサイトで、コードゴルフの問題を出題していた。プログラミング言語の仕様や、アルゴリズムを熟知しないと書けないコードが多数送られてきて面白かった。  ただ、コードゴルフに関しては、それが何の役に立つのかと問われれば、何の役にも立たない。純粋に知的遊戯であり競技である。こうしたことを考えると、人間は、ともかく挑むことと、それを突破することに快感を得る生き物なのだと思う。
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道具の進化とともに増える競技
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