千葉商科大学の田中信一郎准教授(政治学)は、「民間企業がこうしたビジネスを行うこと自体は問題ありません。公職選挙法に明確に違反しているとはいえないでしょう」としながらも、「道義的に褒められたものではありません」と指摘する。
「なぜなら、選挙ドットコムは、議員・候補者が有料会員登録をしたかどうかで掲載される情報の量や掲載の順位が左右されるにもかかわらず、一般の有権者にはそれがわかりにくくなっているからです。
例えば、掲載されている情報が少なかった場合、有権者はその議員が選挙活動や情報発信に熱心でないととらえてしまう可能性もあるでしょう。情報が少ないことの原因が、議員が有料登録していないからだということが分かりにくいのです。
選挙ドットコムが、サイトについて『国政選挙において、戦後最高の投票率を更新することを、一つのゴールとしています』、などと説明しているのも問題だと思います。ビジネスとして運営しているということが一般の有権者には非常に分かりづらく、公共性のあるプラットフォームだと勘違いしてしまいかねません。
有権者にそのように勘違いさせないよう、トップページ等で『データベースの情報量は、議員・候補者が当社に支払っている金額によって異なります』旨を明記することが望ましいといえます。それがあれば、情報の掲載量に偏りがあっても仕方ないでしょう。
聖教新聞や赤旗を思い浮かべてみてください。聖教新聞は創価学会の機関紙であることを誰もが知っています。だから公明党の候補者ばかり取り上げても、問題ありません。赤旗も同じです。読者は、共産党の機関紙だと分かっています。選挙ドットコムも同様に、選挙情報ビジネスであることを明示することが望ましいでしょう」
同サイトを運営する選挙ドットコム(東京都千代田区)の担当者は、情報の更新や公平性に関する指摘について問うと、こう説明した。
「告示日に選管からFAXで情報をもらい、手動で更新しています。そのため全ての情報を掲載するまで時間が掛かってしまうんです。告示日以前については、全ての議員の情報を把握することは到底困難で、古い情報が掲載されたままということも起こりえます」
また、有料登録しているかどうかで掲載順や情報量が違うということが分かりづらいという点については、「サイトを閲覧するユーザーがそのことを分かるようにした方がいいかもしれませんね」と語っていた。
<取材・文/HBO編集部>