4月から始まる外国人労働者受け入れ制度、課題山積。ブローカー規制や家族帯同を認める必要

会見

厚労省記者クラブで行われた会見

 4月1日から新しい制度での外国人労働者の受け入れが始まる。「特定技能」という新しい在留資格が設けられ、一部の業種で単純労働が認められるようになったのだ。しかしこの制度には課題が山積しているという。  移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)は3月29日、厚生労働省で記者会見を開き、「新たな外国人労働者受入れ制度スタートを前に」と題された声明を発表。鳥井一平代表理事は、「外国人労働者を使い捨てしないようにしなければならない」と訴えた。

来日するために年収の3~4倍の借金をしている

 これまで外国人労働者の単純労働は原則として禁止されていたが、新たに創設された「特定技能1号」では、建設業や宿泊業、介護といった14業種での単純労働を認めている。家族を帯同することはできず、在留期間は5年に制限される。建設業と造船・舶用工業の2業種では、家族滞在や在留期間の更新ができる「特定技能2号」という在留資格も新設された。  移住連は、この新しい在留資格について6つの問題点を指摘した。  1つ目は、日本にくる外国人労働者が、ブローカーに借金をして来日するという問題だ。鳥井代表理事は、「外国人労働者は、『返済しなければならない』、『途中で帰れない』という強迫観念を抱いており、低賃金や劣悪な労働条件に甘んじてしまうんです」と指摘した。  外国人労働者の問題に取り組んできた指宿昭一弁護士も、ブローカーの規制が必要だと訴える。 「安倍総理は国会で“悪質なブローカー規制をする”と言っていました。法務省もそのように言っています。しかし実際には、ほとんど規制されていません。政府も法務省も本気でブローカー対策をする気はありません。  ブローカーは、飛行機代やビザの手続き費用、日本語学校の学費を渡航前の費用として徴収しています。一人当たりおよそ100万円かそれ以上にもなることもあります。これは来日する外国人の年収3~4年分に当たります。しかし実際にはそんなに掛かりません。  今回の改正で保証金と違約金などについては禁止する項目があったけど、ほぼ実効性がない状態。その上、政府はこうした水増しされた渡航費用として請求される金額と内容に対して、何の規制もしていません。規制があるけれども、実効性がないのではなく、何の制限も設けていないんです。政府は外国人労働者を本気で保護するつもりがないといえるでしょう」

「特定技能1号」では家族帯同ができないことも問題

 2つ目の問題は、日本語学習の支援や生活のオリエンテーションなどを行う登録支援機関への規制がないことだ。  3つ目に、技能実習生制度と同様、労働者が低賃金で働かされる恐れがある。声明では、「日本人と同等以上の報酬をうたっているが、その実現性は疑わしい。技能実習法でも同様の要件が課されているが、実際には各地の最低賃金レベルに張り付いている」と指摘している。  4つ目は、転職が難しいということだ。技能実習とは異なり、特定技能は「同一業務区分内」での転職が認められている。そのため受け入れ企業の労働条件が悪い場合などには、転職をすることができる。しかし外国人労働者が自力で転職をするのは簡単なことではない。声明では、「転職の自由を形骸化させないためには、公共職業安定機関が特定技能に特化した求人情報の収拾及び多言語による情報提供などを実施し、職業紹介機能を強化すべきである」と提案している。  さらに「技能実習2号」を「良好に修了」すれば、無試験で特定技能1号に移行できることや、特定技能1号では家族の帯同が認められていないことを問題視。家族を連れてこられないということは、外国人労働者が単なる「労働力」とみなされ、人として当然の生活を制限されているに等しいからだ。
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法務省の失踪実習生調査は実態を反映していない
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