北海道にとって大きな争点であるカジノ、泊原発、JR北海道には触れず
3月23日、札幌市内で前夕張市長の鈴木直道候補の応援演説をする小泉進次郎氏
実際、政府が推進する「カジノを含むIR誘致・泊原発再稼動・JR北海道の鉄道存続問題」については北海道にとって大きな争点だが、鈴木氏はこれに異議申し立てをすることはない。告示日(3月20日)の出陣式でも第一声でも、鈴木氏はこれらの争点についてまったく触れなかった。
地震被災地の安平町での第一声を終えた鈴木氏に対して、筆者は「(これらの点に)触れない理由は何でしょうか」と声をかけたが、無言のまま街宣車で走り去った。
この鈴木氏を後方支援するべく北海道入りしたのが、小泉進次郎・厚生労働部会長だ。3月23日に札幌市内で鈴木氏と並んで応援演説。小泉氏は、3回現地入りした沖縄県知事選では辺野古の「へ」の字も口にしない”争点隠し演説”で自公推薦候補を応援したが、この北海道知事選でもIR・JR・原発にはまったく触れていない。その代わりに「鈴木氏が浴びせられている」という3大批判(若さによる経験不足・北海道生まれでないこと・宴席でお酌をしないこと)に対する反論をしていったのだ。「“菅チルドレン”の鈴木氏が当選した場合、元官僚だった高橋はるみ知事以上の、官邸言いなりの国策追随型知事になるのではないか」と地元記者は懸念する。
一方、野党擁立の石川氏は「北海道独立宣言」をキャッチフレーズに「カジノ反対」「脱原発」「鉄道存続」の立場を表明、国策に追随しない独自路線を目指すと訴えている。石川氏の応援団長である上田文雄・前札幌市長が「中央に”すが(菅)る”のは止めよう」と訴え、横路孝弘・元知事も「菅官房長官の鶴の一声ならぬ狼の一声で、自民党北海道連の多くが推す国交官僚ではなく、鈴木候補に決まった。戦前に戻ったかのようだ」と官邸主導の選考過程を厳しく批判していた。対照的な両候補が激突する北海道知事選の今後の展開が注目される。
<取材・文・撮影/横田一>
ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた
『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)に編集協力。その他
『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数