官邸vs.ジャーナリズム――多くの記者たちが異例のデモ参加、問われるメディアのあり方

メディア関係者を含む600人がデモに参加

望月記者

首相官邸前のデモでスピーチを行う望月記者

 前代未聞、極めて異例なことだ。3月14日、首相官邸前で新聞記者などメディア関係者ら600人がデモを行い、内閣官房記者会見での政府関係者による望月衣塑子記者(東京新聞)への嫌がらせに対して抗議した。  多くのメディア関係者らがデモという直接行動に出るようになった背景には、安倍政権が露骨に「報道の自由」への圧力を加えてきたことへの危機感がある。  14日の官邸前デモを主催したのは、日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)。新聞、放送、出版、映画、広告等それぞれの労働組合の連合会、協議会等で構成された組織だ。MICは同日のデモで発した声明で以下のように、内閣官房の振る舞いを批判している。 “菅義偉官房長官の記者会見で、沖縄県名護市辺野古での米軍新基地建設をめぐり、「埋め立て現場ではいま、赤土が広がっております」と質問した新聞記者に対して、首相官邸が「事実誤認」「問題行為」と一方的に断定し、質問制限や妨害行為を正当化する政府答弁書の閣議決定までしました。しかし、赤土が広がっていることは現場の状況を見れば明白であり、記者が記者会見で質問することは自然な行為です。首相官邸の主張は、意に沿わない記者に「事実誤認」のレッテルを貼る卑劣な行為です”

辺野古建設強行の「急所」を突いた望月記者への圧力

 安倍政権が沖縄県の民意を無視して強行している辺野古米軍新基地の建設海域一帯は、絶滅危惧種ジュゴンの餌場であり、アオサンゴ群落は北半球最大規模であるなど、世界的にも貴重な生態系がある。  工事に伴って赤土が流出することは、これらの生態系に深刻な悪影響を及ぼしかねない。そのため沖縄県は、環境保全の条例に反するとして、辺野古新基地の工事計画の見直しが必要だとしている。  辺野古米軍新基地建設の「急所」である赤土流出問題について、望月記者が昨年12月26日に内閣官房記者会見で質問したところ、安倍政権は“逆ギレ”した。首相官邸の報道室が上村秀紀室長名で、首相官邸にある記者クラブ「内閣記者会」に対して、望月記者の質問を「事実誤認」で「問題行為」としたうえで「事実を踏まえた質問をしてほしい」などと申し入れる文書を出した。  さらに、政府は今年2月15日、望月記者の質問が「誤った事実認識に基づくものと考えられる」とする答弁書を閣議決定した。
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「会見は、国民の知る権利のための場」
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