日本母親連盟の記者会見と決起集会、メディアも参加者もごくわずか

「記者会見」なのに独占取材

 では、「226事件」でむしろイベント申し込みが増えたという同連盟の記者会見や政治資金パーティー「日本母親連盟マザリー設立決起パーティー」はどれほどの盛り上がりになるのか。取材する身としては当然、気になるところだ。  3月23日のパーティーを控え、前述の内海氏は日本母親連盟の支援組織である「日本父親連盟」のFacebookページに、こう投稿した。 〈3月23日に日本母親連盟の記者会見が学士会館であります。また、その後設立記念パーティーがあります。すでに226でサクラをやった人間たちや、妨害デマ記事を書いた人たちがいたことがわかっていますが、そのような人からパーティーの申し込みがあったりします。もちろん丁重にお断りしておりますが、母連の女性陣はいささか不安が強いようです。  そこで募集したいのですが、父連で当日にパーティーのガードマン的仕事をしていただける方がいれば、私のほうに連絡をお願いします。パーティーには参加費が本来かかるところ、もちろん無料でパーティーにご招待いたしますが、時間外でガードマン的な仕事をしていただくことが条件です〉(参照:「日本父親連盟」Facebookページ) 「226事件」を受けて「戒厳令」が敷かれ、敕命が發せられたのである。  筆者と鈴木氏は事前にパーティー参加を申し込み、前払いの料金1万円と懇親会費5000円を入金していた。ところがパーティー前日までに、2人には同連盟から〈本パーティーは日本母親連盟の関係者を対象としております〉〈おいでいただいても、ご入場いただくことはできません〉などとするメールが送られてきていた。  筆者と鈴木氏は、同連盟の設立直後から「メルマガ会員」になっている。立派な「関係者」である。メールを無視して、当日、まずはパーティー前の記者会見場におもむいた。  名前を告げると、受付担当者から「今日はこちらからお招きしたメディアの方のみとなっております」と、入場を断られた。 「政治団体の記者会見で、そちらが選んだメディアと記者しか入れないんですか」  と筆者が食い下がる。単なる政治団体ではない。選挙での候補者の擁立や支援を表明している政治団体だ。それが、自分たちが指名したメディアにしか記者会見を取材させないのであれば、「国民の知る権利」を大きく損なう。  奥から阪田代表が出てきた。 「じゃあ取材を受けますから、その代わりにパーティーのほうはご遠慮いただくということで納得いただけますでしょうか」(阪田氏) 「パーティーの話は後で。いまは記者会見の取材に来ているので」(藤倉)  取材を受けるかどうかは、取材・報道の自由、国民の知る権利、政治団体としての説明責任等々に対する同連盟の姿勢の問題だ。パーティー参加の可否を条件とする取引などもってのほか。筆者たちは、パーティーについては「要望は承りました」とだけ答え、回答は保留。それとは関係なく記者会見を取材させてもらうことで話をつけた。 「記者の方たちは直接おいでいただけていなくて、(会見を)動画で撮らせていただいてそれを(メディア各社)にお送りするということになっているんです」(阪田)  すでに会見場には十人強の人々がいたが、全員が日本母親連盟関係者。報道陣はゼロだった。 「質問とかはこの場ではなしですか」(藤倉) 「特にする予定はなくて、私たちのお話だけさせていただくことになるんですけど」 「わかりました」(藤倉)  こうして、「記者会見の独占取材」という前代未聞の取材が実現した。

質疑なしの一方的「記者会見」

代表の阪田浩子氏

代表の阪田浩子氏

 会見では、まず阪田代表が語った。 「私たちの暮らしを守るための政治にきちっと訴えかけることが必要だということで、政治団体を設立しました」  阪田氏はフードビジネスに関わる中で、国産食材についても農薬などをめぐる安全性に疑問を抱いたという。その中で、教育の問題、放射能の問題、日本を取り巻く外国企業の問題などを知るに連れて不安になり、社会運動に関わってきたという。そこで、日本母親連盟設立の話が持ち上がった際に参画。昨年8月1日、総務省に政治団体として届け出を行ったという。  現時点で、「北海道まで沖縄まですべての都道府県を網羅する形」(阪田氏)で38支部を設立し、会員数は5292人になったという。  また、阪田氏は「日本母親連盟マザリー憲章」を発表。「すべてのいのちを慈しみ、おおらかに育みます」「この星に生まれたことに感謝し、美しい地球を次世代に残します」など5項目の行動指針と、「ひとりの声を大きな声に! 国を変える力となる1000万人の同志を募ります」など3項目の活動内容を掲げる内容だ。
広報部長の白河三來氏

広報部長の白河三來氏

 続いて、広報部長の白河三來氏がマイクを握った。  「もともとはブログとかセミナーを企画したりしまして、クスリに頼らないで健康になる、化粧品を使わないで美しくなるというポリシーのセミナーを開いていた。いろんな健康情報をブログやSNSで発信してきた」  そう自己紹介した白河氏は、ブログ等で「美肌研究家、健康医療コーディネーター、アンチエイジング・コンシェルジュ」を名乗る人物。今年1月24日に日本母親連盟関係者が「ホメオパシー統合医療専門学校」学長・由井寅子氏を訪問した際に同行しており、それを報告する自身のブログでこう書いている。 〈ホメオパシーは波動療法のひとつですから、これからの時代、主流になっていくでしょう。動物にも効果があることから、プラセボではないことがわかっています。宇津救命丸みたいに小さいので、乳幼児にも飲ませやすく、ママたちの救世主になること間違いなしです。 そして、なんとマザリー会員には寅子先生の特別講義を受けていただくことができるかも?こちらは準備が出来次第、追ってお知らせしますね〉(白河三來氏のブログより)  後日、この訪問の際に由井氏からもらった「お土産」として、レメディー(ホメオパシー業者が効能をうたって販売している、科学的効果が証明されていない成分)入り商品をブログで紹介するということもしている(白河三來氏のブログより)。  由井寅子氏やホメオパシーは、「226事件」において山本太郎氏が日本母親連盟に疑問を呈したポイントの一つでもある。  しかし記者会見で白河氏は、自身のこうした側面はお首にも出さず、農薬や抗生剤等をめぐる「食の安全」や医療改革、消費税廃止、原発ゼロなどを掲げた「マザリー宣言」(「日本母親連盟マザリー憲章」とは別)について説明した。
母親連盟会見

広報の白河氏と代表の阪田氏

  2人による説明が終わると、司会者がこうアナウンスした。 「これより質疑応答に……」  会見席から阪田代表が司会者を制止する。 「今日は動画だけなんで」  当初は質疑が予定されていたのに予定が変更され、そのことが司会者に伝えられていなかったということなのだろうか。質疑がなかったこともあって、語られたのは日本母親連盟の公式サイト等を見ていればだいたいわかる内容ばかりだった。
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「囲み取材」ならぬ「囲まれ取材」
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