流ちょう過ぎる話術はなぜ心に残らないのか?

間をつくって、聞き手の理解を促す

 前回の記事では、句点で話を止めて間をつくるスキルを紹介した。このスキル演習をしていて、よくある質問が間をつくることが不安だというものだ。間をつくっている間に、聞き手が聞かなくなってしまうのではないかということだ。  たしかに、その間が10秒も、20秒も続くようだったら、話し手はどうしたのか、何かアクシデントがあったのかとざわついて、話の内容についての関心度、集中度を低下させてしまうだろう。  ひと呼吸、ゆっくり目に間を置くということは、関心度、集中度を低下させることよりも、その間に聞き手に「こういう話をしているのだな」「話し手が言いたいことは、こういうことだな」「なるほど、そういう意味か」というように、理解を促す効果が高いのだ。  つまり、流ちょうに話すことは、聞き手に話の内容を反芻する時間的な余裕を与えないから、ついていけない聞き手を増やしてしまうのだ。結局、話が上滑りしてしまい、話し手が話したという事実と、聞き手がその会場にいたという事実が残るだけになる。

「コミュニケーションのアリバイ」を回避せよ

   私はこの状態を、「コミュニケーションのアリバイづくり」と称している。「話をしたというアリバイをつくりました。聞き手が関心度、集中度を示したかは知りません!」「聞き手として、その場にいたことは間違いありません!」という意味しかない。  話し手には、単に話したというアリバイをつくることではなく、聞き手が関心度、集中度を維持するような話をする役目がある。聞き手には、単にその場にいたというアリバイをつくることではなく、その内容を理解して役立てるという目的があるはずだ。  聞き手が関心度、集中度を高めてくれないのは、聞き手が悪いからだと決めつける人が少なくないが、実は、話し手に問題があることが多い。そして、句点で間をつくるという、たったそれだけのことで、かなりの程度、聞き手の関心度、集中度を高めることができるのだ。   質問:話を続けていないと不安だ  句点で話を止めて、間をつくるとよいということですが、話を停止することが不安です。話を停止しているあいだに、相手は集中度や関心度を低下させてしまうのではないでしょうか?  回答:間をつくることで理解を高める  実は、話し続ければ続けるほど、時間の経過とともに、相手の集中度や関心度は低下する一方になるものです。句点で間をつくって、話を停止することで、その間によって「これまでの話の内容はこういうことだったな」「話し手はこういうことを言いたいのだな」というように考える時間を相手に与えることができるのです。  つまり、句点で間をつくることは、相手の理解を促し、そのたびに相手の集中度や関心度を高めることにも役立つのです。 【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第128回】 【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある
(やまぐち・ひろし) モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社新書)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい)、『99%の人が気づいていないビジネス力アップの基本100』(講談社+α新書)、『ビジネススキル急上昇日めくりドリル』(扶桑社)がある
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