―― 権力と記者の間に圧倒的な情報量の差があることを踏まえれば、「批判するなら対案を出せ」といった議論も間違いだとわかります。対案を出すには情報が必要です。メディアに対案を要求するなら、政府はすべての情報を開示すべきです。
南:メディアの役割は権力が公正に行使されているかどうかをチェックすることです。必ずしも対案を出す必要はありません。
しかし現在のメディアは、政治的スタンスによって批判するかしないかを決定していると見られており、その結果、メディアは分断されてしまっています。今後どのような内閣が出てくるかわからないのだから、そのときにメディアの権利や足場となる取材環境を残すためにも、メディアは権力側の政治的スタンスにかかわらず、権力が公正に行使されているかどうか監視するという原点に立ち返るべきです。
―― 官邸と東京新聞とのやり取りで注目されるようになったのは、ファクトチェックの重要性です。南さんは望月さんと『安倍政治 100のファクトチェック』(集英社新書)という共著を出しています。
南:ファクトチェックとは、議論の前提となっている事実関係が正しいかどうかを評価・確認することです。最近では2017年に設立されたNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」が旗振り役となり、ファクトチェックの普及に努めています。
もっとも、ファクトチェックを普及させるには、様々なオピニオンを持っている新聞社が一斉にファクトチェックを行う必要があります。たとえば、朝日新聞もファクトチェックに取り組んできましたが、朝日だけでファクトチェックを行うと、安倍政権を批判するために行っているのではないかという見方がありました。
しかし、ファクトチェックは安倍政権に批判的であるかどうかに関係なく、あくまでも事実関係を確認するために行うことです。意見に対する評価が一緒である必要はありませんが、ベースの事実関係そのものを共有できる仕組みはあったほうがいいと思います。新聞労連としてはそのための後押しをやっていきたいと思っています。
(3月4日インタビュー、聞き手・構成 中村友哉)
南彰(みなみ・あきら)
1979年生まれ。2008年から朝日新聞東京政治部、大阪社会部で政治取材を担当。2018年9月より新聞労連に出向、中央執行委員長を務める。
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@GekkanNippon。「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。