債務整理に向かったのは、高齢者に高値で健康グッズを売りつける店<競売事例から見える世界29>

騙されていると知りつつ居続ける「居場所」

 この集会ゾーン以外は雑なパーティションで区切られており、同じく裏側には雑な感じで健康食品や健康グッズが山積している。  敷地の裏側では隣家との境界が不明瞭だったため隣家にも話を聞いてみると、債務者との口約束で「自由に使っていい」という取り決めがあったという。  この事情説明より時間を割くことになってしまったのが、当該物件で営まれている高齢者に健康グッズを高値で売る店での被害。  なにやら同居のおばあさんがチラシをきっかけにこの店に出向くようになると、健康グッズや健康食品を次々と高値で購入して帰ってくるようになったという。  これを不快に思う家族が厳しく叱責したところ、当初はしおらしくしていたようなのだが、それでも店には顔を出していたため再び叱責すると、態度を硬化。 「騙されてなんかない! お前たちよりずっといい人だ! アタシの金をアタシの好きに使って何が悪い!」  以降は店に入り浸るようになり、同居家族とは目も合わせない状況が続いているという――。  恐らくはこの店のオーナーや従業員も、店にスペースを貸す側も、広告塔として起用される芸能人も、近隣住民も、行政も。  そして“騙されている”高齢者たちも。この店が「高齢者を騙して健康グッズを高値で売る店」であることを、なんとなく知っている。  それでも、居心地の悪くなってしまった同居家庭では見出しづらい“自分の居場所”を、この店に見出してしまう高齢者も少なからずいるということなのだろう――。 【騙す】 冒頭に記した言葉の意味に照らし合わせると、この事例は「言葉巧みにあざむく行為」にあたるのだろうか、それとも「他のことに気を紛れさせ、落ち着かせること」にあたるのだろうか。 <文/ニポポ(from トンガリキッズ)> 2005年、トンガリキッズのメンバーとしてスーパーマリオブラザーズ楽曲をフィーチャーした「B-dash!」のスマッシュヒットで40万枚以上のセールスとプラチナディスクを受賞。また、北朝鮮やカルト教団施設などの潜入ルポ、昭和グッズ、珍品コレクションを披露するイベント、週刊誌やWeb媒体での執筆活動、動画配信でも精力的に活動中。 Twitter:@tongarikids オフィシャルブログ:団塊ジュニアランド! 動画サイト:超ニポポの怪しい動画ワールド!
全国の競売情報を収集するグループ。その事例から見えてくるものをお伝えして行きます。
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