世界を揺るがせたクライストチャーチの銃撃事件だが、犯人の出身地であるオーストラリア在住の女性Rさん(24歳)は、「非常に緊迫した状態」であると話す。
「私を含めて、白人は熱くなるよりも(ムスリムと)連帯することや行動を起こすべきです。SNSにはいろいろな意見があふれていて、中にはいい指摘もありますが、より重要な課題が埋もれてしまうように思えます」
Rさんはオーストラリアのなかでも、地域によって移民政策に対しての温度差があると語る。
「オーストラリアのなかでも進歩的な地域はありますし、(先住民族への)平等や賠償に努めている共同体もあります。しかし、“白人の”オーストラリアは人種差別的です。オーストラリアは盗まれた土地の上に作られ、主権が割譲されることもありませんでした。一部のオーストラリアが素晴らしく、同性婚の権利などがあるいっぽうで、繰り返し先住民族を虐殺したり、銃撃事件のような出来事が起きているのは非常に対照的です」
また、こういった二面性だけでなく、政府機関やメディアも人種差別を蔓延させる要因となってきたのだとか。
「警察は偏って黒人を標的にしたり、収監しています。メディアは存在すらしていない“スーダン人ギャング”で恐怖を煽っていました。事実無根の話を流すことも珍しくありません」
今回の事件ではオーストラリア首相を含め、多くの人々が人種差別にハッキリと「NO」を突きつけたが、まだまだ問題は根深い様子。いち銃撃事件だと捉えるのではなく、社会全体がどのようにレイシズム、そして暴力に立ち向かうかが問われるだろう。日本に暮らす我々も、これをひとつのキッカケとして考えてみるべきかもしれない。
<取材・文・訳/林 泰人>
ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン