クルマの間を縫うように走る、ベトナムのバイク
現在、すでに多くの「働く外国人」が暮らす日本だが、来月1日に施行される改正入管法の新たな在留資格「特定技能」によって、今後本格的な「外国人との共働・共生」の時代がやって来ることになる。
法改正によって急増すると見込まれるのは「アジア諸国の外国人」が主だが、同じアジア圏内とはいえ、日本との文化的な差異はそれぞれ大きい。
そんな中、来日する外国人たちは「日本人との共働・共生」を図ろうと、異文化に対する知識を蓄えてくるが、その一方、「受け入れ側」は、外国人労働者を「働きに来る人」としてしか捉えていないことが多く、実際、彼らの文化的背景や国における知識も薄い。
彼らは今後日本で働くだけでなく、我々とともに「生活」をするようになる。相手の文化に対する理解不足でいらぬ軋轢を生まぬよう、来日側だけでなく我々受け入れ側も、彼らのことは最小限知っておくべきだろう。
増えゆく外国人の中でも今後、触れ合いが多くなると予想されるのが、ベトナム人だ。
法務省によると、平成29年6月末現在の技能実習生の外国人国籍別構成比で、最も多くを占めているのがベトナム人だ。その数は約104,000人で、全体の約41.6%にもなる。
また、日本語教育振興協会の統計によると、ベトナム人の語学留学生の割合は10年前まで1.7%だったのに対し、ここ5年間は、全体の30%前後で推移しており、1位の中国人留学生に次いで多い。昨年度は、語学留学生だけでも14,400人。コンビニに「グエン」「ヒエン」などの名札を付けた店員は、その多くがこうした教育機関に籍を置くベトナム人留学生だ。
そんなベトナムの人口は、2018年現在で約9,300万人。30年もの間、年間約1%ずつその数を増やし続けており、2026年までに1億人を突破するとの予想もある。同国の3大都市は、歴史の詰まった首都ハノイ、商業都市ホーチミン、リゾート地ダナンとされており、他国に違わず人口はこれら都市部へと集中する傾向が強い。
少子高齢化へと突き進む日本とは逆行するベトナムだが、特筆すべきは彼らの平均年齢の若さだ。
ベトナム人の平均年齢は、少子高齢化の日本が45.9歳(世界最年長)なのに対して、29.8歳とかなり若い。こうした国の持つ若さは、労働人口の割合や国内の生産性の高さにそのまま反映されており、2018年の日本の実質GDP成長率が1.2%だったのに対し、ベトナムは7.08%(ベトナム統計総局発表)と大変高く、政府の目標値6.7%をも上回るほどの勢いがある。
余談だが、先日訪越して感じたのは、この若者の多さと、ベトナムの「朝の早さ」だ。
午前6時にはすでに街は活気付き、7時台には出社。8時には皆働き始めているところが多い。そのため、時差で2時間早い日本にある企業とは、事実上ほとんど勤務開始時間に差がない。
現地のベトナム人労働者の平均年収は40万円弱言われているが、昨今のこうした経済発展によって、国民の間にはすでに収入格差が開いており、海外からの駐在員などが多く住む高層マンションにも、入居者の半分ほどにベトナム人が住んでいるところもある。
実際、ベトナムにはIT関連事業に従事する優秀な人材が多く存在し、各国による人材獲得競争も激しさを増している。日本で目にする単純労働者としての「ベトナム人」だけが、彼らの姿ではないのだ。