「2、3秒でアイコンタクトを外す」という演習の参加者が、実際にその動作を繰り出してみて感じた素朴な疑問のひとつに、「2、3秒といっても、いったい、どこでアイコンタクトをはずせばよいかわからない」というものがある。
2、3秒という長さに気をとられると、話がおろそかになり、話に集中すると、アイコンタクトを忘れてしまう。自撮りしたビデオを再生して自分で観てみると、そのような状況を目の当たりにして、さらに疑問が出てくる。
その答えは、私の頭のなかにあるわけでもなく、疑問をもった参加者にあるわけでもない。これまで演習してきた参加者が繰り出してきた行動や話法そのものにあるのだ。
2、3秒でアイコンタクトを外すことをスムーズに繰り出している演習参加者の行動と話法には共通項がある。句点「。」でアイコンタクトを外しているのだ。
句点でアイコンタクトを外すスキルを継続的に繰り出している人に、どのような感覚で繰り出しているか聞いてみると、「話すときは話すことに集中し、アイコンタクトを外すときは外すことだけに気をつける」という意味の答えが共通して返ってくる。つまり、話すという話法の繰り出しと、アイコンタクトを外すという行動の発揮を、分解して行っているということなのだ。
組み合わせてスキルを繰り出すことよりも、パーツ分解したひとつのスキルを繰り出すことのほうが容易だ。それができるようになれば、それぞれのパーツスキルを連続させていけばよい。まさに、2、3秒でアイコンタクトを外すことは、句点までの一文を話す、句点でアイコンタクトを外すという2つの分解スキルの反復なのだ。私は分解スキル反復演習がスキルを着実に高め、そして、それが人生を変えるとたしかに思っている。
質問:視線を外すタイミングがわからない
2、3秒のアイコンタクトを心がけていても、話す内容に気をとられて、つい、相手を見つめ続けたまま話してしまいます。
視線を外すことを意識しようとすると、話がつまってしまったり、まとまらなくなってしまったりします。どういうタイミングで視線を外せばよいのでしょうか?
回答:句点で視線を外す
句点「。」で話を一旦止めて、間をつくり、そのあいだに視線を外すと、リズムが生まれます。句点までの一文は、話すことに専念し、一文を話し終わったら、句点の場所で視線を外してみると、スムーズに視線を外すことができるのです。
話すときは話すことに専念する、間をつくるときは、話すことをやめて間をつくることだけを心がけると、うまくいきます。
話しながら視線を外すというように両方を一度にやろうとするから、視線を外せなくなったり話がつまってしまうのです。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第127回】
【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『
チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『
クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある