Androidの「戻る」ボタンが削除される?されない? 隠されるUI、拡大するデジタル・デバイド

UIが隠されていく現象は、Webブラウザでも発生している

 こうしたUIが隠されていく現象は、スマートフォンだけではない。Webブラウザでも発生している。20年前のWebブラウザ「Internet Explorer 5」(1999年3月18日に公開)を覚えている人はいるだろうか。  タイトルバーがあり、メニューが並び、その下にはいくつものボタンが並んでいた。そのボタンの下には「戻る」「進む」「中止」「更新」「ホーム」「検索」「お気に入り」「履歴」……のように、何をするボタンなのか説明が書いてあった。  そうしたボタンの下には、「アドレス」と書いたURL表示の欄があり、その右側には「移動」「リンク」と文字が書いてあった。  現在最も普及しているWebブラウザ「Google Chrome」の最新版では、タイトルバーは極限まで細くなっており、「戻る」や「進む」といったボタンは小さく、説明書きはない。マウスをオーバーすると説明が表示されるが、そもそもコンピュータに慣れていない人には、そうしたことをするという発想がない。  画面には必要最低限のUIだけが表示されている。残りの機能は、点が三つ縦に連なった「︙」アイコンの中に隠されている。このアイコンの中にメニューがあるということは、初見では見抜けないだろう。  似た物に、三本線「≡」のハンバーガーボタンがある。これも、初見では意味を理解できない。点が三つ縦に並んだ「︙」はメニューを意味して、三本線「≡」はナビゲーションを意味している。このアイコンが何なのか、直感的に理解出来る人はいないだろう。

過去の変遷を経験を強いるUIの受容

 デジタルデバイスやソフトウェアは、よく似た歴史をたどることがある。大きなシェアを取り、バージョンアップが進んで行くと、様々な機能を隠す方向に進化するというものだ。  機能が増えて、その全てを一度に見せられないという理由もある。使い慣れたユーザーが増えて、親切な説明をわずらわしいと感じるようになることも要因だろう。また、クールな方向性にUIを変えようとする圧力が働いたりもする。  そうした結果、既に分かっている人以外は、初見では分からないデバイスやソフトウェアが市場を席巻し始める。  こうした現象は、スマートフォンやWebブラウザだけではない。たとえばゲームでも、続編を重ねるごとに既存ユーザーを満足させるように最適化されていき、新参ユーザーを拒絶する内容になったりする。既存のユーザーは、高度な操作方法が加わっても、これまでとの差分を覚えるだけでよい。過去をふまえた上での簡略化は、初見の人には理解できなかったりする。  デジタルデバイスやソフトウェアは、ユーザー数が増え、市場を支配する期間が長くなると、既存ユーザーの方だけを向いたタコツボ化しやすい。
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利用者の新規参入を阻むUIの省略化
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