接待のお店選びで優先すべきは「雰囲気」か「味」か? 接待営業に隠された心理術

胃袋を制するものは心を掴む

 また、あなたがクライアントを接待をするときには、何にこだわるだろうか? 雰囲気、料理の味、会社からの距離、メニュー内容、価格など、考えなければいけないことは多い。  レストラン予約サイトのオープンテーブル株式会社が行った調査によると、接待時のレストランを選ぶ決め手は、1位:雰囲気(70.6%)、2位:立地条件(64.2%)、3位:メニュー(56.1%)という結果となった。  このように、多くの人は商談内容に合った雰囲気のお店を選ぶことを優先している。たしかに、雰囲気は重要視するのは効果的だ。高級感のあるお店で接待することで、特別感を味わってもらい、恩を売っておくことで、商談を通しやすくする。このような、売られた恩を返さないといけないと思う心理を「返報性のルール」と呼ぶ。  しかし、筆者は正直、接待の効果としてこの「返報性のルール」を期待するのは難しいのではないかと考えている。「返報性のルール」は、相手に恩を返したいと思うような信頼関係も築く必要があるからだ。  また、接待で受けた特別感と商談で出された金額を天秤にかけたときに、バランスが取れていないことがほとんどなので、なかなか商談を通すことに効果を発揮しずらい。なので、「返報性のルール」を期待した接待は、「仲良くしてもらったから、仲良くしかえす」という関係性を構築するための「返報性のルール」なら効果的だが、商談を通すためには、回数を重ねなければなかなか効果を発揮しない。  そこで、筆者がご紹介したいのが、「ランチョンテクニック」である。

美味しいものは話の内容の満足度に繋がる!

「ランチョンテクニック」とは、心理学者のグレゴリー・ラズランが発表した心理効果で、美味しいものを食べていると、その幸福感が話の内容や雰囲気の満足度にも影響するというものだ。  グレゴリー・ラズランは実験で、食事中に政治的意見について説明をし、食事が終わったあとにその政治的意見について、どう思ったかを聞いた。すると、食事前よりも政治的意見に対して、好意的な評価を持つようになったことを発見した。  たとえば、とある製品を既に導入してもらっている会社に対してオプション機能を売り込みたいときに、商談の場所で提案をすると「そもそもそれ必要なの?」と警戒心のバリアを張られてしまう。しかし、美味しい食事をしながら商談をすると、食事なしで商談したときに比べ、その話を好意的に受け入れてくれる可能性があるのだ。  このテクニックは恋愛においても効果的だ、美味しい食事をしながらのデートはたとえ口下手であっても、食事の満足度が自分や雰囲気に対する満足度に影響を与えるため、デート全体の満足度を高めることができる。  知り合いの優秀な営業マンほど、雰囲気がいい店より、古くても隠れた名店を知っている人が多い印象を受ける。誰もが知っている名店よりも、「隠れた名店があるんです」と商談相手を誘って、自分の土俵で食事を取りながら交渉を行っている。この「自分の土俵で」というのも重要である。勝手がわかっているのでリラックスして食事をしながら商談を進めることができるからだ。  もし、あなたが接待で使うお店を考えている場合は、コストや会社からの距離感、雰囲気なども大事だが、自分で様々なお店を開拓して、雰囲気のよさそうな知らない店よりも、勝手のわかっている自分の土俵で味を重視したお店選びをしてみてはいかがだろうか? 【参考資料】 『OpenTable、「接待に関する意識調査結果」を発表』PR TIMES 『接待ってビジネスに必要だと思う? – 半数が「必要だがしたくない』マイナビニュース 『影響力の武器』ロバート・B・チャルディーニ 【山本マサヤ】 心理戦略コンサルタント。MENSA会員。心理学を使って「人・企業の可能性を広げる」ためのコンサルティングやセミナーを各所で開催。これまで数百人に対して仕事やプライベートで使える心理学のテクニックについてレクチャーしてきた。また、メンタリズムという心理学とマジックを融合した心理誘導や読心術のエンターテインメントショーも行う。クラウドワークスの「トップランナー100人」、Amebaが認定する芸能人・著名インフルエンサー100人に選出。●公式ホームページ ●Twitter:@3m_masaya ●Instagram:@masaya_mentalist
心理戦略コンサルタント。著書に『トップ2%の天才が使っている「人を操る」最強の心理術』がある。MENSA会員。心理学を使って「人・企業の可能性を広げる」ためのコンサルティングやセミナーを各所で開催中。
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