ピエール瀧逮捕にファン騒然。議論を呼ぶ「作品封印」。有名人の不祥事にはどう反応するべきなのか?

 お気に入りのアーティストやクリエイターに不祥事が発覚した……。そんなとき、受け手側のファンはいったいどのように彼らの作品と付き合っていけばいいのだろう?

ファンを困惑させるアーティストの不祥事

移送される瀧容疑者

コカインを使用したとして麻薬取締法違反容疑で逮捕され、移送されるピエール瀧容疑者。(時事通信社)

 3月12日深夜、ミュージシャンで俳優のピエール瀧が薬物の使用容疑で逮捕されると、インターネット上は騒然とした。 「ショック……」 「出演作はお蔵入り?」 「電気グルーヴの夏フェス出演はどうなる?」  薬物使用への憤りを発散させるコメントや、エキセントリックなキャラクターで知られるミュージシャンなのだから驚かないといったものまで、意見はさまざま。  こうした薬物使用だけでなく、近年はエンタメ界での不祥事に対して、厳しい視線が向けられている。「#MeToo」がいい例だが、社会全体でポリティカル・コレクトネスが叫ばれているのも、その一因だろう。有名人の不祥事や失言はメディアで大きく取り上げられるだけでなく、SNSを通じてファンの間でも議論が巻き起こる。  差別や偏見、格差が原因でなかなか声を上げることができなかったマイノリティを守るうえで、こういった社会的風潮は喜ばしいことだ。  また、こうした流れを受けて、当時は表沙汰にならなかったり、問題とされていなかった行動や発言が、今になってあらためて注目されることも珍しくない。

ファンはどう受け止めるべきなのか?

 しかし、それは同時に今まで闇に埋もれていた事実に光が当たることを意味する。アーティストやクリエイターの知られざる闇が暴露されれば、それだけショックを受けるファンも増えているのだ。  今回のピエール瀧容疑者のような、犯罪という事例であれば、司法によって裁かれて刑を終えればまだ気持ちの区切りはつけやすい。  しかし、より難しくなってくるのは、人種差別的発言や児童虐待、未成年への性的暴行などのケースだろう。非倫理的な度合いが高かったり、ファン自身が「差別される側」の属性だった場合、ファンの“正しい”反応とは、いったいどのようなものなのか。それまでのように応援する? もう一切作品を鑑賞しない……? 過去の作品はお蔵入りにするべきなのか?  たとえば、日本でも大ヒットを記録し、本年度のアカデミー賞を最多受賞した『ボヘミアン・ラプソディ』。監督のブライアン・シンガーには未成年への性的暴行疑惑が浮上しており、受賞スピーチでも彼の名前が挙がることは一切なかった。  シンガー監督は撮影終了の数週間前に降板したものの、クレジットにはしっかり名前が載っており、作品も予定どおり公開された。しかし、ヒットの陰で複雑な思いを抱いているファンは少なくない。  ただ、一方的に業界から抹殺されることで社会復帰や更生への道が閉ざされてしまう可能性は否めないのは間違いない。
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性的虐待疑惑で配信中止の例も
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